1. シビックテックにまつわるQ&A〜東京大学公共政策大学院での学生とのやりとり〜

インタビュー

シビックテックにまつわるQ&A〜東京大学公共政策大学院での学生とのやりとり〜

先日、東京大学公共政策大学院で、シビックテックに関する授業をさせてもらいました。

当日利用したスライドを以下にアップしてあります。

講演中、Sli.do というオンラインの質問ツールを使って質問を集めたのですが、講演後のQ&Aが大変活発に進み盛り上がりました。せっかく質問がテキストで残っているので、私が行った回答を整理すると共に、時間切れで回答がしきれなかったものへの回答を加えて記事として掲載したいと思います。

スライドだけではコンテキストがわかりにくく、質問や回答の内容に不明な点があるかもしれませんがご容赦ください。それでは早速いきましょう

各地の活動について

Q. 各地のワークショップの運営はボランティアだと息切れしませんか?
Q. 他の方の質問と同じような質問になりますが、多くの方々がここまで動く原動力やインセンティブはどこにあるのでしょうか。息切れすることはないのでしょうか。

A. 活動の原動力は様々です。
自分が欲しいから、楽しい、勉強になる、成長に繋がる、仲間ができる、課題を解決するのが好き、ネットワークが広がる、仕事になる、自己の信念、怒り、たまたま誘われたから、などなど、きっかけはなんでも良いです。一歩動き出すかどうかが重要です。
例えば、私個人で言えば、きっかけは東日本大震災での無力感でしたが、今では世界中に仲間ができ、神戸市のチーフ・イノベーション・オフィサー職や総務省の委員などにもなり、仕事の幅が当時からは想像できないほど広がっています。
たとえそこまでやらなくても、仕事以外でも自分のスキルを発揮でき、仲間ができるというのは素晴らしいことです。社会課題について知るということは、いつか自分に降り掛かってくるかもしれない危機に対する選択肢を広げることにもなります。人生100年と言われている中で、一つの組織だけに依存した生き方は逆にリスクになると思います。会社とは別のコミュニティに所属しスキルを磨くことは、そういったリスクの分散にも繋がるのではないでしょうか。
もちろん生活ステージや仕事の変化、モチベーションダウンなどの要因で息切れするときはありますが、それはそれでいいと思っています。息切れしたらお休みして、また余裕ができたら戻ってもいいですし、別の活動を始めるのも素敵なことだと思います。

Q. 各地での自主的な「市民のつながり」は、どのように生まれているのでしょうか?

A. Code for Japan が各地のキャプテンをアサインするということはありません。自発的に手を上げた人が旗を立て、仲間を集めて活動を始めます。そこで集まった人達がやりたいことを選び、ワークショップなどの活動を行い、地域の人や役所の人と共創していきます。

Q. 共創ワークショップの主催を各地のコードフォーがしているのですか。

A. はい。各地のコードフォーが自分たちでやり方を考えたり、他の地域で行われたワークショップをアレンジしたりしながら行っています。

Q. 地域コミュニティへの帰属意識が薄い地域でも、市民が課題解決に自発的に取り組むのでしょうか?

A. はい。神戸市や横浜などの政令指定都市でもCode for が存在しています。活動のモチベーションとして、「課題を解決したい」というものと、「自分のスキルを活かして行政を良くしたい」という2点があり、後者のモチベーションで活動をしている人も多いです。

Q. ハッカソンやアイデアソン、ワークショップはどのような層の方々が参加しているのですか?

A. ワークショップのテーマや地域の繋がりにより様々です。ハッカソンの場合はだいたいの感覚では技術者3割、デザイナー1割、企画系3割、テーマに関連する関係者2割、あとはその他といった感じでしょうか。学生主体のワークショップなどの場合はもちろん学生が多くなります。
アイデアソンの場合は非技術者の方が多くなることが多いです。
また、ハッカソンではなくマッピングパーティなどのイベントの場合は地域のボランティアガイドさんなども呼ぶこともありますし、勉強会の場合は行政職員などを呼ぶことも多いです。

Q. シビックテックを市民が自主的に進めていく上で、現行の法制度が妨げになっていることはありますか。

A. 活動自体を制約するような法制度は特にありません。個別のプロジェクトの中では、あるかもしれません。(個人情報保護法など)

Q. code系の団体が作った実績のまとめサイトがほしいですね

A. そうですね!台湾のシビックテックコミュニティ、g0v では、プロジェクト一覧のページがあります。
日本でも作りたいと思っています。

アプリケーションについて

Q. アプリを作るのにお金と時間がかかると思うのですが、どうしているのですか?

A. 多くのプロジェクトは、ボランティアやプロボノによる作業と、事業として資金を集める部分をバランスしながら進める必要があります。
例えば 5374.jp を自分の地域で使いたいというときは、サーバはGitHubでホストすれば無料で使えます。データ作成やシステムづくりには人手がかかりますが、初心者でも数日で完成することが多く、多くの地域に広がっています。
一方、Code for 選挙のように多くの人手やサーバ代がかかる場合もあります。サーバ代は Code for Japan が負担していますが、ボランティアによるシステム開発やデータ入力が進んでいます。海外のNPOから資金提供の話も来ていますし、選挙後は政治家全般のオープンデータ作成プロジェクトにシフトする予定です。今後、よりインパクトを産むプロジェクトにするために、何かしらのファンディングを計画するかもしれません。

Q. ゴミなしのデータは各地共通ですか。

A. データ形式はほとんど共通だと思います。

Q. ゴミなしは無料ですか?これを作ろうという動機は何ですか。

A. 基本的には無料です。動機は、「自分も欲しいから」「Code for の活動の入り口としてちょうどいいから」「みんなの役に立ちたいから」「プログラムの勉強になるから」「楽しいから」など様々ですね。
データさえ揃えれば、プログラムの初心者レベルでも1日あれば作れますし、GitHubという無料のホスティングを使っており運用にもお金がかからないので、気軽に取り組めるのも広がっている理由だと思います。
Code for Kanazawa は、行政向けにゴミなしの有料版も展開しています。

Q. 保育園データをそろえるのは保育園側の抵抗はないですか?

A. 特にそういう意見は聞いたことが無いですね。むしろ情報を出して欲しいという声の方が多いです。

グローバルネットワークについて

Q. コードフォーアメリカができた背景を知りたいです。

A. オライリーメディアというところでエンジニア向けのイベントを運営していたジェニファーパルカさんが、2009年の Gov2.0 Summit というイベントの中である市の担当者と話をする中で、「エンジニアが行政の為に1年間働くフェローシッププログラム」というアイデアを思いつき、ティム・オライリーなどが資金を出し、Sunlight Foundation などから助成金を受ける形でコードフォーアメリカが誕生しました。
また、オバマ大統領の選挙キャンペーンを支援していた人達も設立に協力しています。

Q. 世界中のcode for何とかは統一された組織ですか?

A. いいえ。Code for Japan は Code for All というグローバルネットワークに参加していますが、日本各地の Code for ネットワークと Code for Japan との関係のように、それぞれの国の Code for と Code for All も独立した関係にあります。理念は共にしていますが、意思決定においては別の組織です。

Q.フードスタンプについて、チャットのような形で申込など手続をしたときに、後から検証可能な証拠は残るのですか?

A. インターフェースとしてはチャットを使っていますが、サーバ側には履歴が残りますし、実際には裏側の手続きデータベースに連動していますので、問題ありません。

オープンガバメントについて

Q. バザール型の行政になったら、職員が何をしたらいいかわからなくなってしまうのでは?

A. バザール型といっても、おそらく今までやっていたような縦割りの組織が大きく崩れることは無いでしょう。オープンガバメントが進んでも、やるべきことが極端に変わるわけではありません。
ただし、仕事の効率化が進んだり、市民とのコミュニケーションの量が増えたりといったことはあると思います。

Q. 伽藍型は今に始まったことではないのに、なぜ今対応できるのでしょうか?

A. オープンソース文化がここまで普及したのは、1. インターネット、スマートフォンの普及によりコミュニケーションが高度化したこと、2. 無料で使えるツールが増え活動のコストが大幅に下がったこと、3. ソフトウェアが現実世界を侵食していることが背景にあります。
例えば今回の Code for 選挙では、GitHub、Google Docs、Wikidata、といった無料のツールを使って作り上げています。
開発においてのやりとりも、無料の Slack というチャットツールを使い、広報や仲間集めも Facebook などを使って行いました。
3つ目の理由については、マーク・アンドリーセン氏の「ソフトウェアが世界を飲み込む」を参照すると良いでしょう。
(渡部薫氏の意訳文)http://sora.rainbowapps.com/software
実際、AI、IoT の活用は行政サービスにも必要になってきています。過去のやり方を踏襲するような考えでは、こういった新しいテクノロジーに対応できません。これまでの歴史の中でソフトウェアを向上させてきたオープンな文化が現実社会のガバナンスにも影響してくることは、必然だと思っています。

Q. オープンガバメントは地域でどこまで広がっていますか?まだ知らない人が多いと思うのですが。

A. まだ、一部の感度の高い人だけ知っているという感じですね。地方でも、知っている人は知っています。特に、行政の中でも企画職に当たる人は知っていることが多いです。ただ、本来昔からある「官民協働」とか「市民参画」とかいった概念の延長なので、感覚として全く伝わらない話ではありません。
昨年12月に成立した「官民データ活用推進基本法」では、データ活用推進計画を国が立てることを法制度化しました。この中にはオープンガバメントの概念が含まれています。
法制度化されたことにより、都道府県はデータ活用推進計画の策定が義務化され、市区町村も努力義務が課せられています。

Q. オープンガバメントは国の行政レベルでも実施可能なのでしょうか。

A. 実施可能です。特にオープンデータについては、国も率先して実行しています。例えば、http://www.data.go.jp/ で各省庁の持っているデータを公開しています。
また、国土地理院は開発したソフトウェアやデータをもともとオープンソースで公開していますし、気象庁や統計局も様々なオープンデータを提供しています。
経済産業省は「オープンガバメントラボ」というサイトを運営しており、様々な事例を紹介しています。
予算や決算といったデータが詳細に公開されていなかったりといった課題はありますが、オープンガバメントを推し進めている人は庁内に存在します。

Q. たしかに行政と協力して公共サービスを良くしていくのは大事だと思うが、残念な話、サービス向上よりも自分の仕事を形だけやることにしか興味ない行政職員が牛耳っている公共サービスはどうやったら改善できると思いますか? また、見方を変えると行政が面倒に思っている所だけ市民に外注する形もあり得るのでは?

A. 「サービス向上よりも自分の仕事を形だけやることにしか興味ない行政職員」というのもたしかにいると思いますが、職員の大半は誠実に仕事をしています。また、Code for Japan の活動に積極的に参加してくれる素敵な職員もたくさんいます。そういった職員と一緒に具体的な成果を積み上げていくことが、重要だと思っています。
私が神戸市のチーフイノベーションオフィサーや、総務省の委員をさせてもらっているのも、そういった人達と一緒に、中から行政の文化を変えていくことができると信じているからです。
対話と実践を通じて、市民(ないし自分たち)の生活が良くなるようなサービスが出来ていけば、きっと行政全体も変わっていくでしょう。
そのためには、行政のルールがわかり、コミュニティ側のモチベーションももわかるような翻訳者を生み出していくことが必要だと思います。

Q. parkletはどうやって少数による独占化を防ぐのですか?

A. できるだけ地域で解決するべき問題です。それが自治と言うものです。こじれた場合は行政が話し合いの場を作るかもしれません。

Code for 選挙について

Q. Code for 選挙における中立性はどのように確保しているのですか?

A. 基本的に、事実情報や過去の実績を重視するスタイルを取っています。例えば国会での発言履歴などを乗せていきたいと考えています。地方議会のものも入れられると良いのですが、それは色々大変ですね。

Q. データを作成する側にバイアスがかかった人間が意図的に集められる可能性は今後あるのではないでしょか?つまり、作る側の身分保障はどのようにしてますか
Q. codefor選挙の正確性の担保の方法は?
Q. 性善説に依って立つ仕組みのように思えますが、悪意のある参加者を排除することはできるのでしょうか?
Q. 誤ったデータが入力された場合の訂正はどのように行っていますか?データより正しいものになるような工夫がありますか?

A. データを作る側の身分保障などは行っていません。選挙のデータについては、気づいた時に修正しています。Wikipedia がそうであるように、不正確な情報も入っていると思いますが、より多くの人の目に触れることで、間違いも発見しやすくなると思います。WIkidata の方にもデータを登録しているので、そちら側でのチェックも入ると思います。
間違っていた場合にフィードバックが貰えるフォームも設置予定です。
データの正確性を保つには多くの人の目が必要なので、オープンにして広く公開し、より多くのボランティアを集めるのが近道だと思っています。

Q. これに似たやつで、居酒屋の迷惑客の電話番号サイトあると思いますが、あれも支援できませんか?

A. 具体的に活動したい人が現れて、Code for の活動として始めるなら、できるだけ応援します。私が始めるのではなく、誰かが主体的に始めるのです。あなたが支援活動を始めても良いですよ 🙂

コミュニケーションについて

Q. slack以外に使いやすいチャットツールありますか?
Q. ラインではあんまりやらないんですか?

A. Slack ではなく Facebook Messenger を使っているところは多いですね。地域によってはLINEも使っていると思います。活動をする人達が一番使いやすいものを使うのが良いでしょう。

Q. 全く関係ないのですが、関さん自身が一杯色んな団体の仕事している中で、どうやってメールとかの確認をするのですか?

A. あんまりメールはリアルタイムには見てないですね(笑)フェイスブックメッセンジャーやSlackでのやり取りの方が多いです。発生したタスクを Todoist というツールに入れて、毎日朝にやることを決め、 PomoDone App というツールを併用して日々機械的に処理しています。
参考:ポモドーロテクニック
http://ttmmjm.hatenablog.com/entry/2016/12/05/000543

 


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code for japan

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