2024年7月1日、参加型民主主義プラットフォーム「Decidim(デシディム)」の第2回ユーザー会が開催されました。前回から2年ぶりの開催となり、Decidimを導入している自治体の担当者や関係者が一堂に会し、和やかな雰囲気の中で活発な意見交換が行われました。
Decidimの概要
Decidimは、「みんなで決める」という意味のカタルーニャ語に由来する、市民参加型のまちづくりを促進するオンラインプラットフォームです。2020年からCode for Japanが日本国内での展開を進めており、現在では多くの自治体などで活用されています。
自治体の活用事例
加古川市:若年層の意見を積極的に取り入れる
加古川市では、スマートシティ構想の策定にDecidimを活用し、特に若い世代との対話に重点を置いています。高校生や大学生が積極的に参加し、構想に対する意見を投稿するなど、世代を超えた対話の場として機能しています。
また、駅前再開発プロジェクトでは、市民からのアイデアを地図上に可視化し、投票や追加提案ができる仕組みを構築しています。これにより、市民のニーズをより直接的に把握するだけでなく、対面のワークショップの際にDecidimに投稿されたアイデアも合わせて参照することでアイデアをさらにブラッシュアップさせることが可能になっています。
加古川市市民参加型合意形成プラットフォーム(兵庫県加古川市): https://kakogawa.diycities.jp/
西会津町:中学生が主体的にまちづくりに参加
人口約5,000人の西会津町では、中学校でのアントレプレナーシップ教育の一環としてDecidimを活用し、今年度は高校での活用も開始しています。生徒たちが考えるまちづくりのアイデアを共有し、町内外の大人たちと議論を行うことで、主体的なまちづくり参加を促進しています。
特筆すべきは、地元を離れた方や西会津町に関心を持つ外部の方々も議論に参加できる点です。これにより、多様な視点を取り入れたまちづくりが可能になっています。
西会津町Decidim(福島県西会津町): https://nishiaizu.makeour.city/?locale=ja
釜石市:大学生の視点を取り入れた情報共有
釜石市では、大学生のインターンシップ活動の記録やまちづくりプロジェクトの情報共有にDecidimを利用しています。外部から訪れる学生の新鮮な視点を取り入れることで、新たな気づきを得る機会となっています。
「ともに考え、ともに活動する」釜石版Decidim(岩手県釜石市):https://kamaishi.makeour.city/
浜松市:構想・計画の改定過程の公開
浜松市では、浜松市デジタル・スマートシティ構想等の2構想1計画の改定過程を公開しています。
また、過去に実施したワークショップのアーカイブをDecidimで公開することで、企業や各種団体との更なる連携を促進しています。
浜松市Decidim:https://hamamatsu.makeour.city/
課題と今後の展望
ユーザー会では、複数年Decidimの活用を進めてきたことによる課題として、浜松市からの書面による質問事項も含め以下の議論を行いました。
- ユーザー登録率の向上:多くの自治体が、ユーザー登録数の伸び悩みに課題を感じています。
- 庁内での横断的な活用:特定の部署だけでなく、庁内全体での活用を促進する必要性が指摘されました。
- 若年層の参加促進:高校生や大学生の参加は見られるものの、さらなる拡大が望まれています。
- ユーザビリティの改善:新規ユーザーや高齢者が使いやすいインターフェースの必要性が挙げられました。
UIの改善:Code for Japanの取り組み
これらの課題に対応するため、Code for Japanは最新バージョン0.28で以下のUI改善を計画しています。
- シンプルなUI:直感的に操作できるデザインへの刷新
- ナビゲーションの改善:目的の機能へのアクセスを容易に
- コンテンツブロックの拡張:より柔軟なページ構成が可能に
- ユーザー登録プロセスの簡素化:登録の障壁を低減
- 管理画面の改善:運営側の利便性向上
これらの改善により、より多くの市民が気軽に参加できるプラットフォームを目指しています。
まとめ:市民参加型まちづくりの新たな可能性
Decidimは、単なる意見収集ツールではなく、市民と行政が協働でまちの未来を考えるためのプラットフォームです。今回のユーザー会で共有された事例や課題は、今後のDecidimの発展と、より広範な市民参加の実現に向けた重要な示唆となりました。
各自治体におかれましては、Decidimを通じて市民の声をより効果的に政策に反映させる可能性を探っていただければ幸いです。市民参加型のまちづくりという新しい形が、今まさに広がりつつあります。
デジタル参加プラットフォーム(DPPs)の展開に、引き続き注目が集まっています。市民と行政が一体となった、新しいまちづくりの形。その実現に向けて、DPPsがどのように貢献していくのか、今後の動向が大いに期待されます。Decidimは、このDPPsムーブメントの一翼を担う重要なプラットフォームの一つとして、積極的な役割を果たしています。
次回の開催
2024年度内に第3回の開催を予定しています。
Decidimについては、下記詳細ページのほかMetaDecidim Japanのウェブサイトや過去の活動レポートをご確認ください。
- MetaDecidim Japan:https://meta.diycities.jp/