1. データを活用して「未来」を創る〜より建設的な政策立案プロセスを身につけるために〜

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データを活用して「未来」を創る〜より建設的な政策立案プロセスを身につけるために〜

Code for Japanが、2017年度からデータアカデミー事業をスタート。平成29年度は総務省と国内11の地域、そしてCode for Japanなどが連携し、研修が実施されました。
本稿では、2018年4月23日にヤフーLODGE(東京・紀尾井町)で開催されたデータアカデミー報告会の模様をダイジェストでお伝えします。(Code for Japanのデータアカデミーに関する内容のみ掲載しています)
※本レポートのより詳細な内容に興味がある方はこちらからダウンロードしてください。

Code for Japanの活動におけるデータアカデミー事業の位置づけ

Code for Japan 理事/CODE for IKOMA 代表 佐藤 拓也氏

Code for Japanでは、「行政向け」「コミュニティ向け」「一般向け」の3つを軸に活動を展開してきました。今年度からは新たに「NPO向け」の事業(「ソーシャル・テクノロジー・オフィサー」)が加わりました。
この4つの事業の中で、データアカデミーは「行政向け」事業の1つになります。総務省「地域におけるビッグデータ利活用の推進に 関する実証の請負」事業の一部として、平成29年度にデータアカデミーの普及展開を担いました。平成30年度はさらに多くの自治体を対象に研修を展開する見込みです。

官民データ活用推進基本法により地方行政に求められるEBPM

総務省 情報流通行政局 地域通信振興課 地方情報化推進室長 松田 昇剛氏

 2016年12月に成立・施行された官民データ活用推進基本法。
法案の骨子策定に関わった総務省の松田氏は講演で、同法の基本理念(第1章 第3条3項)には、解決するべき政策課題をデータに基づいて検証し、政策の効果をより高めることを目指すEBPM(Evidence Based Policy Making)が掲げられていることを説明しました。
「とはいえ、自治体が保有するデータは、なかなか活用されていません。活用には専門的な知識が必要であり、Code for などの協力が必要です。専門家が協力や分析をしやすくするためのデータアクセスの開放も求められます」(松田氏)
自治体が保有する、EBPMに用いられるデータは主に次の3つです。
(1)非公開データ(住民データ、業務データ、許認可データ等)
(2)非識別加工情報(特定の個人を識別できないように加工した個人に関わる情報)
(3)オープンデータ、統計(個人性なし)
「EBPM推進には、自治体保有データを職員自身が使ってみることが重要です。取り組みを持続するには、『現場の仕事を楽にする、新しくする』『部、課を超えて共有する』『住民との連携・協働に活用して街をつくる』という3点が大切と考えます」(松田氏)
総務省は、自治体保有データの庁内活用を推進する施策を複数打ち出しており、データアカデミーもその1つ。データアカデミーの果たす役割が期待されている、と松田氏は指摘しました。

データアカデミーの概要と実施内容の報告

Code for ふじのくに代表/Code for Japan/市川電産 代表 市川博之氏

 データアカデミーの概要について、Code for ふじのくに代表で、Code for Japanのフルタイムメンバーである市川博之氏が説明しました。
「自治体でデータ利活用が進まない背景には、次のような流れがあります。データをそもそも何に使うかわからない。業務多忙でデータ整備の時間がなくデータもノウハウも蓄積されない。その結果、新しいことに取り組むにも今までと同じように勘と経験に頼ってしまう。この負のループを逆転させるのが、データアカデミーです」(市川氏)

図:現状は多くの自治体でデータ活用が進まない

 データ利活用の理想的な姿は、職員自ら実務上の課題に即したデータを分析して、課題解決や新しい住民サービスの提供のために活用すること。そのプロセスを通じて、自ずとオープンデータを含む、庁内で扱うデータの整備も進み、ノウハウも蓄積されます。異動してきた職員にもその知見が共有されることで、組織全体でのデータ利活用が維持・改善される、というのが自治体データの理想的な利活用イメージです。

図:ループを逆に回すことでデータの利活用が進む

データアカデミーは、庁内のデータを利活用するためのプロセスを職員が体験するアクティブラーニング型の研修です。個別のデータ分析技術を覚えるのではなく、データ分析を使って課題解決のプロセスとスキルを身につけることできます。
対象とする自治体の規模は、政令指定都市から、人口1万人以下の町村単位までと幅広いことも大きな特長です。研修では、原課から提出された実際の課題を利用します。

図:一般的なデータ分析研修とデータアカデミーの比較

研修は、大きく2つのモジュールとプロセスで構成
データの利用では、大きく2つのフローが用意されています。「データ分析による政策反映」と「データ利用による課題解決」です。

1. データ分析による政策反映

【概要】政策の課題(政策が期待した効果をあげていない/効果をより高めたい)が生じる原因を推測し、仮説を立案します。当該仮説を検証するためのデータ(特定の個人を識別できないように加工されたパーソナルデータを含む、庁内外に存在するデータ)を収集し、仮説の正当性を検証します。仮説が不適切であれば見直す一方で、データにより裏付けられた有力な仮説(原因)が見つかれば、その原因を取り除く解決策などを政策に反映します。

2. データ利用による課題解決

【概要】「行政としてこういうサービスを住民に展開したい」というサービス検討の段階で実施します。サービスのあるべき姿は何かを考え、そのために必要なデータを検討・選定・収集し、サービスのプロトタイプ(試作品となるアプリやWebサイト)を作りながら、利用者の視点でサービス化を検討します。

データアカデミーに必要なスキルとチームメンバーの役割
アクティブラーニングを実現するために必要なスキルは次の4つです。
(1)コンサルタント
(2)ファシリテーター
(3)データ分析、またはサービスを検討する際には、プロトタイプ作成を行うメンバー
(4)自治体職員(集合知を活用するため、複数の部署の職員が参加するのが望ましい)

4つのスキルとチーム体制は、前述の「データ分析による政策反映」と「データ利用による課題解決」のいずれにおいても共通しています。

今回実施した研修内容の振り返り
今回の研修のやり方は次の通りです。
「データ分析による政策反映」と「データ利用による課題解決」それぞれ1つのステップを1.5~2.5時間、3〜4日間ほどで行いました。

図:実施した11自治体リスト

 各ステップは、モジュール化されており、切り出して研修することが可能です。自治体ごとに庁内の状況や必要とされる業務プロセスに応じて、どこからどこまで実施するか研修前に決めます。

データアカデミーの事例紹介

神戸市
テーマ:「高齢者の居場所情報をGISで活用」
データアカデミーの種別:[データ利用による課題解決]

神戸市および神戸市各区の社会福祉協議会(社協)、また、あんしんすこやかセンターなど、高齢者福祉に関わる現場職員を交えて、高齢者が集える居場所に関する情報を把握・活用できる地図サービスを実現する場合に、どのようなデータやプライバシーへの配慮が必要なのかを検討しました。

図:神戸市で検討した高齢者居場所マップのイメージ

 現状、神戸市の介護保険課や社協では、それぞれ高齢者の居場所の情報を独自にリスト化して管理しています。ただし、マッピングは紙の地図に手書きで行われていました。一方、市民協働推進課では、地域単位の情報マップを独自に作っていました。
しかし、いずれも連携・情報共有がなされていませんでした。「目と鼻の先に高齢者が集う歌声喫茶があっても隣の区であるため、居場所のデータのリストから漏れているケースもありました」(市川氏)
データアカデミーの参加者からは、「せっかく各課が作ったデータがあるのだから、地域全体の情報として一元的に集約・分析したい」「各課の持つデータをまとめたうえで、地元の自治会の参加者とともに、シルバー世代に寄り添った対応ができるような地図を作りたい」といった要望が出ました。

図:居場所マップのプロトタイプ作成にGISを活用した神戸市

【今後の展開】
神戸市の区社協レベルで、今回開発した居場所マップの本格的な利用が開始される見通しです。次年度のバージョンで修正するデータ項目も、3回目の研修までに決まりました。
さらに、市職員さんと区社協の方々が対話を通じて、デイサービスやグループホームなど施設の情報を加えれば、居場所マップ以外の他の業務にも使える、と新たな施策に向けた具体的なアイデアが発表されました。
そして、神戸市の原課が庁内GISを利活用する際のルールが決まり、今回のデータアカデミーが神戸市におけるGIS整備のプロトタイプとしての役割も果たしました。 今回、データアカデミーに参加した神戸市社協の職員からは、「収穫が多くテンションが上がる」「(データアカデミーは)座学の研修と違う画期的な仕組み」という熱のこもった感想が聞かれました。このように、複数の部門にまたがってゴールをすり合わせ、取り組むことでデータアカデミーの価値は増幅します。

図:神戸市データアカデミー参加者の感想が記されたグラレコの写真

 

データアカデミーの研修を通じて得たもの

このセクションからデータアカデミーを実際に体験した職員の方の声をご紹介します。

・芦屋市
テーマ「ガンメタボ検診率と、防災計画」
データアカデミーの種別:[データ分析による政策反映]

芦屋市企画部政策推進課 主査(総合政策担当)筒井大介氏

 1995年の阪神淡路大震災の後、芦屋市では、復興のために市債を多く発行。自主財源の伸びが鈍化したこともあり、実質公債費率および将来負担率は近年、高止まりしているのが現状です。
そうした中、「芦屋市でも、説得力のある施策を立案するスキルが求められていました」と、芦屋市役所 政策推進課の筒井大介氏は打ち明けます。
そうした中、データアカデミーの紹介がCode for Japanからあり、2018年1月〜2月に、3回に分けて1コマ3時間の研修を実施しました。取り上げたテーマは、2つ。1つは、特定健診(メタボ検診)率の向上、もう1つは、災害事前計画や発災時計画の立案に向けた地域ごとの防災計画のデータ検討です。
芦屋市では20人の職員が参加。1チーム5人からなる4チームを作り、2つのテーマそれぞれに2チームずつを割り当てました。
2017年3月まで、芦屋市保険課 国民健康保険担当だった筒井氏は、「特定健診(メタボ検診)率の向上」テーマを検討するチームに参加。報告で筒井氏は、その体験にフォーカスして振り返りました。

【1日目】
データアカデミー1日目には、仮説の立案を行いました。
「仮説を出すポイントは、なるべく具体的なレベルに落とし込むこと。『仮説を検証するにはこういうデータが必要ではないか』と考えながら仮説を組み立てます。仮説が漠然としていると、その検証に必要なデータを洗い出せなくなります」(筒井氏)
1日目には10以上の仮説とそれを検証するために必要な約20のデータが出てきました。チームでは、体系立てて整理するために仮説と、検証に必要なデータを結びつけるツリー状の図を作成しました。

図:検診率に関する仮説と必要なデータをツリー構造で整理した例

図:仮説の検証に必要なデータのリスト

【2日目】 仮説に対するデータの分析方法の検討を体験しました。
検証に必要なデータの過不足を調べたところ、約20種類のデータは庁内の各所管部署が保有するデータでおおよそ網羅できることがわかりました。ただ、個人情報の取り扱いには注意しました。「こうしたデータは個人情報を含まない統計情報などに加工した上で活用しました」(筒井氏)
地図データの表示には、GISのオープンソースソフトウェアであるQGISを利用しました。

【3日目】 分析結果を発表し、参加者全員で評価しました。
「なるべくコストをかけずに、検診率の向上につながるインパクトの大きい仮説の優先順位をあげました。正しい仮説であっても、対象者が少なく、施策を実施しても検診率の大きな向上につながらないと見込まれるものは、費用対効果の観点から優先順位を下げました」(筒井氏)

図:検診を行っている施設の位置と町ごとの検診率を色の濃淡で表すGISの画面

図:いろいろなアイデアを付箋に記しながら参加者が意見を交わしました

 有力な仮説として、「普段病院に行かない人は検診しない」「かかりつけ医がいる人は、検診率が高い」などが抽出されました。この仮説に対してそれぞれ「病院に行ってもらうようにする施策が必要だ」「かかりつけ医のある市民を増やすと良い」という施策が提案されました。
「『芦屋市の特定検診を行っている病院に通っているけれども検診を受けていない人』は年間でおよそ1,500人います。そのうち2割(300人)が検診してくれると検診率は4%もアップすることが見込まれています」(筒井氏)

【データアカデミーの評価】
「データアカデミーを体験して、仮説検証を通じて、たったひとつの冴えたやり方がすんなり出てくるわけではないことを実感しました。様々な角度から仮説を出し、それをデータを用いて分析・検証していく作業を泥臭くやる必要があると感じました」と筒井氏。データ分析の特徴を体験するとともに、これまでになかった新たな気づきをデータ検証を通じて得る面白さがある、と指摘しました。

・静岡県賀茂地区(下田市、河津町、松崎町、東伊豆町、西伊豆町、南伊豆町)
テーマ:「移住者データと取り扱い」
データアカデミーの種別:[データ利用による課題解決]

静岡県経営管理部 ICT推進局 ICT政策課 ICT政策班 伊藤允彦氏

 静岡県賀茂地区の1市5町では、半島振興法を背景にこのエリアへの移住定住の促進を進めていました。ところが移住定住の相談を受け付ける窓口がそれぞれの地域バラバラに運営され、情報が共有されていないという課題がありました。
データアカデミーに1市5町が参加した背景には、賀茂地区広域連携会議の存在がありました。この連携会議は、財政、住民サービスの向上を目的とした賀茂郡の広域プラットフォームです。
今回のデータアカデミーでは、1市5町で使える移住定住者のデータベースを作るところから、各役所の窓口で運用するまでのフェーズに取り組みました。
参加者は約10名。チームは分けないで議論をしました。

【1日目】 現状とあるべき姿を確認しました。「参加者に『そもそも移住定住とは何か』『みんな何がしたいのか』というところから考えを整理しました」(市川氏)
仮に「自宅の窓から富士山が見える場所が良い」という希望者から、地理的に富士山が見えない東伊豆町に問い合わせがきた場合、西伊豆町など他の市町の関係部署につなぐことが円滑にできません。窓口の職員も忙しく、情報を横断的に共有するのが難しい状況が往々にして起きていたといいます。

【2日目】初日に検討した、広域連携でのデータ利活用という、あるべき姿に基づいて、実際にサービスを提供するにはどのようなデータが必要か、そのデータをどのように誰がやりとりするかという仕事の流れ(業務プロセス)を検討しました。研修では、現状の相談業務と、あるべき姿に基づく業務フロー図を描きました。

図:「利便性の高い窓口づくり」で対応している現在の状況

図:現在検討されている「あるべき姿」

市町を超えてデータを共有するために各市町の個人情報保護条例との調整、データを流通・管理する仕組みの保守やセキュリティ対応も検討。全体の方向性や条例などに基づくトップダウンの視点と、現場担当者からのボトムアップの視点という両輪で、充実した議論になりました。

【3日目】開発したシステムのプロトタイプを用いてディスカッションしました。
「静岡県移住相談センターや総合窓口の担当者が、移住相談情報や転入情報などの画面に、どのようなデータを入力するのか、その結果、どのようなデータが出力されるのか、実現後のイメージを掴みやすくなりました」(伊藤氏)

【4日目】相談窓口一本化による経済効果の算定などを行いました。
「運用業務を地元民間企業に発注すれば地域の産業振興にも寄与します。『移住者には、移住のきっかけや相談窓口の対応についてアンケート調査し、そのデータに基づいてさらに促進施策をよりよく見直そう。そのためには事後調査の仕組みもシステムにあらかじめ組み込んでおかないといけないね』といったアイデアも出ました」(市川氏)

【今後の展開】
今回のデータアカデミーを通じて、これからの政策のすすめ方が明確になった、という評価が参加した職員から口々に聞かれたそうです。
さらに、1市5町の移住データベースを目指す今回の研修で収めた一定の成果に基づいて、移住以外のテーマ、たとえば、地域包括ケアシステムにおける相談窓口の一本化などに向けた施策検討も視野に入ってきました。

■パネルディスカッションと質疑応答

パネリスト:筒井大介氏(芦屋市)、伊藤允彦氏(静岡県)、市川博之氏(Code for ふじのくに)

モデレーター:関治之(Code for Japan代表理事)

以下に、パネルディスカッションでの主な論点をまとめました。

関:職員の皆さんがデータアカデミーを利用するメリットは。

筒井:政策立案のためにデータ分析を外部のコンサルタントに依頼するよりも、早く結果がわかる手応えをつかみました。現場を知る自分たち職員でやることで、調べたい結果が的確に得られると感じました。

伊藤:賀茂地区では、広域で部署を越えて課題を共有できる利点が大きいと感じました。

関:データアカデミーを実施する立場から、工夫した点や気づきは。

市川:賀茂地区の場合は、普段顔を合わさない職員が一堂に会してのワークショップということもあり、最初固い雰囲気でした。事前に各町の特産品などを調べてその話題でアイスブレークをするなど、場を和ませるように心がけました。
印象に残ったのは、生駒市の職員の方の発言です。「データアカデミーやデータ分析は大事だが、型にはまらず個性を入れなければならない」という言葉です。あえて、高齢化と子育てのどちらを優先するか、どの地域に投資を厚めにするか、自治体としての意思を入れて考えることが大切だ、という言葉が胸に響きました。

図:生駒市のデータアカデミーで用いられたグラレコペーパー。描かれた赤い円の中に、「Dataに振り回されない」「型にはまるな、個性を入れろ」と、印象に残る職員のメッセージが記されていました

関:データアカデミーの参加者は主に原課の職員。参加時の反応はどうか。

筒井:参加した20名の職員は自主的に集まってくれました。多忙な中にも時間を割いてくれたのは、日頃感じる必要性とマッチしたのではないかと思います。また、他の部署との連携のきっかけがデータを通じて可能になりそうだと感じました。

伊藤:職員は参加に積極的でした。今回のデータアカデミーは原課からの発案で立ち上がりましたが、広域連携会議を活用できたことで実現に漕ぎ着けられた面が大きいです。

関:データの分析や利用の結果、既存の政策と矛盾する結果が得られることはないか。その場合、既存の政策に影響はあるか。

市川:茂原市でのデータアカデミーでは、同市の昼間人口は周辺自治体から来る人が多く占めると当初想定していたのですが、近年のデータを分析すると昼間人口は減り、ベッドタウン化していたのです。そこで、市の総合計画など政策面で人口動態に関する前提を見直す必要性がないか、と提言しました。

筒井:芦屋市でのデータアカデミーを通じて、議会での質問への回答などで裏付けを取る際の検討材料の一つになるかもしれない、という可能性を感じました。特定健診の受診率向上を目指すのであれば、国保の中心的な加入者である高齢者向けの施策が効果的です。しかし、若年層にも早いうちから健康に関心を持ってもらうことで中長期的に見ると市全体での病気の予防につながります。現場の職員が、なぜ今、その政策や仕事をやるか、と考えるきっかけになれば良いなと思います。

伊藤:賀茂地区ではデータ利用による課題解決でしたが、新たにデータを共有・作成するという点で既存の政策とのバッティングは少なかったと感じています。

関:データアカデミーを自分たち職員で実施できるとベストだが、可能か。

筒井:実際は、厳しいと思います。理由の1つは、職員の時間の確保。もう1つの理由は、人材の育成です。公務員にはどうしても異動があり、せっかく人材が育っても担当する職場を離れざるをえない。個人的な理想を言えば、任命された職務の他にもう一つ(データ分析を行うような)ダブルワークができるとよいのに、とは思います。

伊藤:私も同感です。また、実際には誰がデータの加工などをやるのか、得られた結果をどう使うのか、という課題もあります。「得られた結果をどう使うのか」という点でもどういうプロセスを踏んで行政の事業、場合によっては予算要求につなげていくか、というアプローチが必要です。単に「こんな結果がデータから得られました」というだけでは現場は動けませんから。

関:このような課題に、データアカデミーとしてはどのように対応していくべきか。

市川:賀茂地区のように、実業務に組み込みながらのOJT研修が一つの解だと言えます。一例としては、長期総合計画を立案する場面で、データアカデミーを実施するのが良いでしょう。こうすることで、データアカデミーを開催する時間を別に確保する必要もなくなります。
または同じく賀茂地区のように、すでにあるスキーム(1市5町の広域連携会議)に追加(アドオン)して実施することで、取り組みやすくなります。
また、課題を解決する重要な知見は、職員の皆さんがいる「現場にある」ということを改めて思いました。一方で、現場で見過ごされやすい思い込みに気づいたり、知識や思いを引き出したりするために、外部の視点を加えることが大切です。

伊藤:賀茂地区ではデータアカデミーを、システムを発注する前のある種「仕様をつかむ」実証実験的なイメージで実施しています。庁内では、課題意識を持っている原課の職員に対して、情報セクションから『データアカデミーという研修システムを活用してはどうか』と提案してみることが重要だと思います。

Q1(会場からの質問):QGISを使ってみて難しくなかったか。導入にあたって留意した点は。
伊藤:QGISは個人的に趣味で使っていることもあり、使用にあたって特に違和感はありませんでした。
筒井:同じ兵庫県の宝塚市がCode for Japanのコーポレートフェローシップ制度を利用して、課題解決にQGISを利用していることを聞いていました。他の自治体での実績を伝えることで、庁内の情報政策課の許可を得やすかったと思います。

Q2:データアカデミーでは、データを活用した予測についての研修は実施するのか。
市川:すでに日進市で実施した事例があります。日進市では、2040年の人口や税収の推計データを用いて、それを見据えた政策を検討しました。

Q3:官民データ活用推進基本法とあるが、官民連携の取り組みはどうか。
伊藤:静岡県では、データカタログは全国の都道府県に先駆けて公開しており、事例も67ほどあります。ICT企業や地域コミュニティとの関係性が大切だと感じます。

筒井:芦屋市では率直にいうと現場に余力がなく、まだ十分に連携はできていないという状況です。官民連携についてはそもそも「需要があるのか」という質問を周囲から受けることがあります。需要があると連携も働きかけやすくなります。

関:(官民データ活用基本推進基本法では、EBPMや行政の効率化と併せて、オープンデータの推進も記されているが)オープンデータについての取り組みはどうか。
伊藤:公開にあたって、間違いを指摘されたくないという声が庁内にはあります。しかし、かつて私が在籍した森林計画課ではデータを公開しても目立った苦情は特にありませんでした。むしろ、公文書開示請求やデータを出して欲しいと言った対応のやりとりがオープンデータ化以降減り、業務効率化が図られました。同様に、近年は、県の高度情報化計画も官民データ活用推進基本法に沿って見直しています。

市川:「過去作成したデータに間違いがあると指摘されると困る」という自治体の場合には、過去のデータではなく、現在業務で利用しているデータからオープンデータ化することを提案しています。

関:データアカデミーも広がってきた。研究会も立ち上げたい。ぜひみなさんのお知恵を借りながらデータ活用を進めていきたい。

市川:より小さい自治体、ICTの専門家がいない地域でこそ、データアカデミーが生きてきます。ほとんどの自治体の人口は10万人以下、職員数も限られています。役場の担当者でも実施できるようなやり方を目指すと同時に、自治体単独ではなく広域連携を進めることが必要です。

クロージング

報告会の総括として、総務省 情報流通行政局 地域通信振興課 地方情報化推進室長 松田 昇剛氏が次のように総評を述べました。

「お客様である住民との対話を通じて、どこにどのような課題があるかを探り、政策を練り、実行するのが自治体職員の仕事だと思います。しかし、多忙な業務の中で余裕がなく、むしろ現場は疲弊しています。その流れを変えるためにも、総務省も応援します。(日本創成会議の報告書によると)2040年までに全国の約半数の自治体が人口減少で存続が危ぶまれると言われていますが、それを乗り越え、皆で一緒に2040年を迎えましょう」(松田氏)
松田氏は、総務省では、2018年4月に「ICT地域活性化ポータル」をオープンするなど、各自治体の先進的な事例や、取り組みをサポートする補助制度(地域IoT実装推進事業など)を紹介する情報発信を進めていることに触れました。

この日、報告会の会場には、各地で開催されたデータアカデミーの論点をまとめたグラフィックレコーディングの成果物が展示されました。

また、報告会当日の模様もグラフィックレコーダー(市川希美さん)により、模造紙にその場で記録され、来場者に公開されました。

■データアカデミーこれからの展開

「データアカデミーエッセンス」のご案内

「データ分析による政策反映」における7つのステップのうち、7番目の効果・指標を省略し、政策立案まで行うものを実施します。
自治体の個別課題ではなく、防災、子育てといったテーマから選び、そのために必要な情報を選択・収集します。
この度、Code for Japanが募集をかけたところ、11の自治体さんから申し込みをいただき、実施が決定しました(2018年6月15日と6月29日に開催)
データアカデミーは、今後も継続的に実施していきます。
データアカデミーに対する関心の高まりにともない、ファシリテーターやコンサルタントのニーズも増しています。地域の企業・団体・大学などの有志でファシリテーターなどに関心のある方はぜひ、データアカデミーにご参加してみてください。エッセンスを掴んでいただくことで、データアカデミーをより多くの自治体で実施したいと考えています。
また、各地域での活動の成果やフィードバック、ベストプラクティスを情報交換できる研究会や、ノウハウをオープン化して発信する場を作りたいと考えています。積極的なご参加をお待ちしています。
データアカデミー問い合わせ先:data-academy@code4japan.org(担当:市川)

図:データアカデミーの今後の姿

 

「制作協力:エクリュ」

code for japan

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