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コロナ時代の参加型民主主義プラットフォームの実践〜Decidimを例に〜

2021.10.22 | 活動レポート

初出: 技術評論社刊『ソフトウェアデザイン 2021年10月号』執筆: Code for Japan 東 健二郎(https://note.com/kken78
コロナ禍で様々なモノやコトがオンライン化され、多くの人とつながれるようになった可能性を感じる一方で、「リアルのよさ」もあらためて実感する日々だと思います。
今回ご紹介するのは、そんなコロナ時代に注目を集めているオープンソースの参加型民主主義プラットフォーム「Decidim(デシディム)」の実践事例です。
「オンラインでの参加型民主主義は可能なの?」、「リアルでの意見交換は今後どうなっていくの?」という疑問が頭によぎったら、この記事を参考にぜひDecidimに参加してみてください!

Decidimとは?

Decidim(https://decidim.org/ja/)は、「我々で決める」を意味するカタルーニャ語にちなんで、2016年にバルセロナで誕生したオープンソースの参加型民主主義プラットフォームです。バルセロナでの活用を皮切りに、世界各地に広がり、フィンランド、台湾などをはじめとして180以上の組織、32万ユーザー、160以上のプロジェクトが立ち上がっています。

Decidimの特徴

オンラインとオフラインの融合

イメージ動画(図1)では、オンラインでさまざまな人がつながれることが説明されており、オフラインでのグループディスカッションにおいてDecidim上で出た意見を活用することについてもうまく表現されています。
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図1 Decidimのイメージ動画
このように、オンラインとオフラインの良さをそれぞれうまく活かす方法、これがDecidimの肝であるように思います。

合意形成を進めるプロセスとコンポーネント

そうした融合を可能にするために、Decidimでは様々な機能(コンポーネント)を組み合わせ、合意形成を進めるプロセスを設定できます。
具体的には、ミーティング・提案・予算・調査・ディベート・ブログなどの機能が搭載されています。これは、これまでオフラインで行われてきた「ワークショップでのアイデアを集めて、発散させて収束するプロセス」をオンラインでも可能にするための、いわばテンプレートです。このプロセスを設計できるテンプレートが豊富にあることが、これまでのCMSとは異なるとも言えるでしょう。
Decidimを使った人が「参加型コンテンツを作るテンプレートがあるWordPressのようなもの」と表現したことがありますが、そのとおりだなと思います。

日本での導入

日本においては、東京大学先端科学技術研究センター・吉村有司さん、Code for Japan・関治之さんたちを中心に日本語化を行いました。Ruby on RailsベースでAWS上に構築し、GraphQLに準拠したAPIがが用いられているなどの特徴があります。また、バージョンアップも継続して行っており、このプロジェクトには、多くのシビックテッカーが改善に参加いただいています(https://github.com/codeforjapan/decidim-cfj)。この場をお借りして、感謝申し上げます!

自治体での活用から始まる

Decidimは、2020年10月に兵庫県加古川市で日本で初めて導入されて以来、横浜市や兵庫県のプロジェクトをはじめ、国のスマートシティガイドブック策定にも用いられたほか、民間部門でも活用がはじまっています。ここでは、Code for Japanが手掛けているものを中心に紹介します。

日本初は、兵庫県加古川市

日本での導入は、スマートシティ先進地として有名な兵庫県加古川市が、今後のスマートシティ推進に関する構想を策定する際に活用したことから始まりました(図2、https://kakogawa.diycities.jp/)。
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図2 加古川市のDecidim。施設愛称募集には多くの投票が寄せられた(右)
地元高校でDecidimに意見を提出する授業が行われるなど、オフラインでの取り組みも活発なものになり、導入初年度はユーザーの約4割が10歳代という極めて特徴的なサイトになりました。
その後、2021年度からは、施設の愛称募集や河川敷の利活用アイデア募集をはじめ、様々なテーマで意見交換や提案が行われています。
加古川市のケースで注目したい点は、オンラインとオフラインを組み合わせるタイミングやその組み合わせ方に工夫が見られることです。
子育てプラザと公民館の複合施設が開設されるに際して愛称募集を行った事例では、クラウドソーシングで集めた多数の愛称候補の中からDecidimを活用して3つに絞り込むことにしました。その後は、施設が立地する地域住民に回覧板でも投票を実施したり、想定する利用者層の住民の目にとまるよう各地でシールによる投票をしたり(写真1)するなど、従来型の方法(これをオフラインといっていいでしょう)も組み合わせたプロセスにDecidimを取り入れています。
そして、今後2022年4月のオープンまでの間に、愛称が決定されるまでのプロセスや施設の完成状況などもDecidim上で共有されます。このことで、「自分も愛称決定に参加した」という実感が生まれ、施設利用にもつながるエンゲージメント獲得にも寄与するという流れが期待できます。
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写真1 市役所庁舎をはじめ市内各地で実施するボードでの市民投票

兵庫県でも導入

こうした加古川市の動きに触発されて、2021年3月から兵庫県も活用するようになった(図3)ことは印象的です。兵庫県では、2021年度末までに策定する県の総合ビジョンの素案を作るために、これまで行っていた県内各地でのタウンミーティングによる意見交換をDecidimが補完しています。また、サイトでは各地の大学・高校など若い世代の意見が多く掲載されており、ビジョン策定に必要な多様な声の獲得に寄与していると言えます。
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図3 兵庫県のDecidim(https://hyogo-vision.diycities.jp/)

自治体以外の活用

Decidimが、もともとスペイン・バルセロナ市で始まったこともあって、自治体での活用に対するイメージが強いところがありますが、多様な組織が多様な使い方を行うことを意図したプラットフォームです。そうした中で、日本でも自治体以外の活用も順調に始まっています。

よこはま自民党

Code for Japanが手掛けているものではありませんが、よこはま自民党(https://jiminyokohama.decidim.jp/)の例のように、政党が活用するケースも登場しているのは注目です。政党と有権者とのつながりは、とりわけ地方議員は対面での活動が中心であることが多い印象がある中で、SNSとは違う形で新たな関係を作ろうとする方向が今後も進んでいくことが期待されます。

大学授業でも

デジタルプラットフォームと若い世代が相性がいいことは、他のツールでも明らかになっていることですが、Decidimが提供するコンポーネントやフェーズの考え方は、大学授業におけるグループディスカッションにも有効です。
筆者が早稲田大学で授業をした際にも、少しの説明で何の迷いもなく学生が提案を書き込んでそれぞれにコメントをつけている場面を見ることができました(図4)。
彼らにとっては、SNSの少し違うものという感覚で、オンラインで意見交換をすることはごくごく自然なことであるようです。
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図4 早稲田大学授業での例(テーマは「コロナ禍で感じた大学生活あるある」でした)

展覧会でも使ってます!

こうした「多数の意見を集める」機能を拡張していく先に、参加するプロセスそのものが展示にもなりうることが示されています。
2021年7月2日から11月28日まで開催されている「ルール?展」(21_21 DESIGN SIGHT、東京都)は、日常のさまざまな場面で遭遇するルールに関する展覧会ですが、来場者同士で意見を交換してルールをつくったり、投票したことが展示に反映されるしかけになっています。
そのテーマの一つに「市民が社会課題解決に取り組むシビックテックのしくみ」も取り上げられており、いわゆるアーティスト(!)としてCode for Japanが参加し、ルールについて考える場をDecidimを活用して提供(図5、https://rules-2121.diycities.jp/)しています。
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図5 ルール展?のDecidim

今後の展望

以上ご紹介した実践例の他にも、本誌が刊行されるころには、新しいDecidimが立ち上がっているかもしれません。そうしたことも踏まえて、今後の展望について触れたいと思います。

小規模自治体での活用

これまでご紹介しているオンラインのプラットフォームは、「都市」で設置されていました。しかし、これからは、より小規模の自治体での活用が進む方向が見えています。
Code for Japanでは、2021年6月、人口6千人あまりの福島県西会津町(https://inaka.nishi-aizu.jp/)と連携協定を提携しました(図6)。「日本の田舎」を謳うこの小さなまちで、デジタルプラットフォームを活用した住民参加型のまちづくりをはじめようとしています。
このたびのコロナ禍で一番影響を受けたのは地域コミュニティのつながりでした。その影響がビビッドに現れたのは、その地域コミュニティのつながりが日常の(=オフラインの)多くを占める小さなまちです。その1つである西会津町が、オンラインのツールであるDecidimに注目していることはをどう考えたらよいでしょうか。筆者は、少子高齢化が進む課題先進国である日本だからこそ、Decidimの可能性にいち早く気づき、これまでと異なる活用の方向が見えてきたように思います。
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図6 福島県西会津町との連携協定締結(西会津町の公式Webサイトより)

テーマごとにゆるやかな連携〜シビックテックの出番〜

こうしたDecidimの活用例を見ていくと、まだまだ活用領域は数多くあるように思います。逆に言えば、「オフラインとオンラインの融合」が特徴のDecidimが活躍できる場面は、みなさんが決めると言ってもいいかと思います。オープンソースであるDecidimの活用方法を決めるのは、やりたいことをみんなで取り組むことを通じて地域課題を解決していくシビックテックそのものとも言えます。
そうした取り組みを進めていくためのコミュニティとして「Metadecidim Japan」(https://meta.diycities.jp/)というサイトをDecidimで立ち上げています。これはDecidim本家の「Metadecidim」にインスパイアを受けて立ち上げたものですが、事例の紹介や、ちょっとした使い方を試してみるといった実験サイトとして運用していきたいと思います。活用方法についていろいろご意見をお寄せください!

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