GovTech は市民参画を促進させる

2019.02.12 | お知らせ

2月10日に、神戸市主催で GovTech Summitというイベントを開催しました。

3連休の中日というタイミングにもかかわらず、参加者300名以上、スタッフを入れると350名以上が大手町のSMBCホールに集まり、すごい熱気のイベントになりました。経産省の吉田さんが講演の中で「2019年をGovTech元年に。」と言っていましたが、本当にGovTechが盛り上がっていく年の象徴的なイベントとして記憶されるかもしれないですね。

神戸市のチーフイノベーションオフィサーとして神戸市のスタートアップ支援を手伝い初めてそろそろ3年になりますが、「神戸市が主催した G0vTech のイベントにこんなに人が集まるなんて」と、感慨深いものがありました。特に Urban Innovation Kobe については、「自治体がスタートアップ支援するなら、こういうことをやりたい」と思い企画段階から提案した事業だけに、とても感動しました。実際には、神戸市の多名部課長やそのチームメンバーである市役所職員、事務局として裏方を支えたコミュニティリンクさんや神戸新聞社、課題を出してくれた現場職員、なによりスピード感が全く違う行政とのやりとりを根気よく続けて成果を出してくれたスタートアップの皆様の頑張りが実を結んだものです。本当に感謝しています。ありがとうございます。

(当日のツイッターの模様はTogetter にまとまっています。)

GovTech の推進には皆の参加が必要である

イベントの参加者は、行政関係者が3分の1、スタートアップやシビックテック関連の人たちが3分の1、残りは興味のある個人や企業といった顔ぶれでした。GovTech をテーマに据えたことは、サービスを実装する視点で皆が話すために、より健全な形で議論ができる効果があるかも。

従来の行政イベントはどうしてもSI関連や公共営業、コンサル会社などの参加者が多くなりがちでした。一方、今回は若い人たちや女性も多く参加しており、とてもオープンかつフラットに人々が会話をしていて、あの場自体が素晴らしい共創の場になっていました。GovTech という領域には、スタートアップやシビックテック関連の人たちが関わることになるため、自然と市民参画の場にもなるということがわかりました。

基調講演には、いつかどこかでお話をしてもらいたいと思っていた尾原さんに、「GovTechという緩やかな革命 -テクノロジーを手に誰もが参加できる行政の仕組み-」というタイトルでお話をしていただきました。印象深かったのが、これからの社会では互助(Civictech)と共助(Local Govtech)の領域両方を拡大させていく構造が必要になるというお話でした。まさに私も普段言い続けていることです。尾原さんが社会のためにテクノロジー活用を進めるきっかけになったのが阪神淡路大震災、そして私がシビックテックの活動を始めたのが東日本大震災であるという繋がりにも、縁を感じました。

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講演資料はこちらに公開されています

尾原さんの講演より

尾原さんの講演より

デレク・シヴァーズの「社会運動はどうやって起こすか」の動画を最後に流し、「はだかで踊っているのが今日来ているスタートアップやシビックテックの実践者。今日来ている人は、フォロアーとしても応援してほしい」というメッセージで締めくくっていただけました。ちなみに、このTEDトークは私も大好きなもののうちの一つです。

 

実際、Code for Japan を始めた6年前にはシビックテックやGovTechなんて言葉はほとんど知られていなかったことを思い出し、踊り続けていれば社会は変わり始めるのだなぁなんてしみじみ感じました。会場のみなさんも勇気をもらったのではないでしょうか。

そのあと尾原さんと私で対談をさせていただいたのですが、予算が減って行く行政のお金を当てにするのではなく、行政のデータを使って何か周辺でマネタイズをするビジネスや、GovTech のような長い時間がかかるビジネスに対して投資するファンドの必要性などをお話しました。

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GovTech の壁は、意思決定の分散と調整コスト

その次は、経済産業省DXオフィスから、平本さん、吉田さん、酒井さんが登場。Code for Japan のイベントにも良く参加していただく面々です。今回のイベント統括の奥田さんがモデレーターで、国のGovTechについての取り組みを掘り下げました。

吉田さんのプレゼンテーションより

吉田さんのプレゼンテーションより

パネルディスカッションでは、チーム単位ではやる気があって早いスピードで動けたとしても、別の課との調整、さらに他省庁との調整なんかにはどうしても時間がかかってしまうのは現状の国の課題である、という話が出ました。Code for Japan でも中小企業庁のアジャイルプロジェクトを行なっていますが、まさに同様の課題に直面しています。

平本さんが、「エストニアのX-Road が注目されがちだが、実はデータの整備の方が大事であり、台帳の整理やデジタル化をしっかりやっていきたい」といった趣旨のことを言っていたのはとても重要だと思います。ツールばかりに目が行きがちですが、大事なのはデータであり、ワークフローですしね。

失敗を許容し、反省から学ぶ

その後、行政とスタートアップが協働する Urban Innovation Kobe の事例紹介や、神戸のスタートアップ支援を受けたメンバーたちによるぶっちゃけトーク。よくあるイベントでは、「ぶっちゃけ」とか言いながらも主催者に都合の悪いようなぶっちゃけ話にはならないことが多いのですが、このサミットでは結構攻めた話題が多かったのではないでしょうか。

まず、 Urban Innovation Kobe という取り組み自体が、失敗を許容しているのが新しい点です。予算を確保して仕様書を作って入札をした上でシステムを作るのではなく、先にスタートアップと実証実験を行うのですから。想定外の良いソリューションやアイデアが出るかもしれませんし、うまくいかない場合も出てきてしまいます。

Urban Innovation Kone の3つのテーマ

たとえば、上記にあげた6つのテーマの中で、地域統合バスロケの整備実証実験については、市内の民間バスや国交省までもがバスロケデータを標準化する中、肝心の神戸市バスのみが標準フォーマット化ができなかったのです。

神戸市バスのみ標準化できず・・・

神戸市バスのみ標準化できず・・・

こうなってしまった原因ですが、トラフィックブレイン太田氏は、「神戸市交通局のシステムには機能が足りなかった。実証実験の早い段階でその状況は分かっていたのに、UIKの窓口は神戸市交通局ではなく、調整に時間がかかりすぎてしまった。行政は意思決定が分散しすぎている。現行のシステム自体市長案件で導入されたこともあり、調整に時間がかかった。」と語っていました。これは非常に良くわかります。一枚一枚ボトムアップでレクを上げていくのではなく、意思決定の責任者を早めに明らかにし、早めにその責任者と情報共有して、早めの意思決定ができる仕組みであるべきです。これができないことが、GovTech を進める際の大きな課題だと思います。

職員は地域との接点として動くべし

一方、協働がとてもうまく行ったケースが、神戸市長田区まちづくり課とためま株式会社による、子育てイベントの情報発信です。市民団体や個人が、ためまっぷという情報共有ツールを使って紙のチラシの写真を撮って共有する実験を行いました。長田区役所の担当者が熱心にツールの活用を地域に説明したところ、

・子育てイベントへの参加者が1.5倍に。
・利用者(子育て世代の住民)の満足度が98%に。
・従来と変わらないイベントの内容で、月に65回開かれているイベント参加者が550人から800人に急増。

という成果を出すことができました。

自治体職員は課題のことをよく知っていますし、さまざまなステークホルダーや当事者との接点を持っています。それを活かし、スタートアップと人々をつなげることができれば、スタートアップにとっても有益な実証実験ができることを示せました。なにより、職員とスタートアップが「チーム」として目線をしっかりと合わせて活動できていて、お互いが感謝し合っていたことが一番よかったと思っています。

長田区役所、ためまとUIK関係者

長田区役所、ためま、UIKスタッフと打ち上げにて。

失敗も成功もオープンに共有

その後の、スタートアップによるパネルディスカッションもヒートアップ。

スタートアップによるパネルディスカッション

スタートアップによるパネルディスカッション

スタートアップと行政とは目指すゴールが違っていて、調整に時間がかかってしまう問題や、異動によって積み上げてきた関係性がパーになってしまう問題、そして公平性の問題など、とても貴重な本音を聞くことができました。

このような失敗事例や耳の痛い話もオープンに公開して議論につなげる。これは今回のカンファレンスで運営チームが大事にしていたことです。失敗があるから学びにつながる。付き合ってもらっているスタートアップには申し訳ないのですが、新しいことへのチャレンジですので、失敗は当然発生します。重要なのは、同じ問題を繰り返さないようにすること。そのためにはオープンに共有し、皆で知恵を絞る必要があります。

最後のまとめのセッションでは、寺崎副市長からも前向きな話をもらいました。Urban Innovation Kobe は本当に良い仕組みだと自負していますし、チャンスがあれば他の自治体ともぜひ一緒にやっていきたいと思っています。(スタートアップと現場職員の間に入って調整するのはめちゃくちゃ大変ですが)

参加型カンファレンス

いろんな話を聞いて「あー面白かった」で終わらないのが GovTech Summit。GovTech Cafe というテーマディスカッションが続きます。

全国から集まったテーブルファシリテータがテーマを持ち込み、1テーブル4〜8名くらいでディスカッションを行いました。

・神戸GovTech事例オフレコ話(セッションで言えなかったこともここで話すよ)
・若い世代の視点を行政に(若い世代の声は行政にどう届けられるのか)
・小さい自治体の為のGovTechとは?本当に必要なサービスはなにか。
・UIKプロマネと考える行政におけるアジャイル開発のコツ
・テクノロジーで変えられる女性×就労とは
・福祉・介護分野におけるGovTechとは
・データを利活用した政策立案
・鎌倉市(予定)
・常識の壁を越えよう – 問題解決のためのTransferable Skills (異分野で通用する力) とは –
・Govtechが叶えるヘルスケアの未来 – 今の医療は、望んでいるものか –
・Fashion x Goverment (ファッションを切り口としたテクノロジーがどう地域振興に役立つか)
・GovTechを若い世代の心強い味方にするために – 海外事例リサーチから考えよう –
・技術者が考えるGovTechあれこれ
・ホントに紙とおさらばできるのか?
・社会・政策データから住民の心理を「現状分析」してみよう
・「私にとって無駄」なものには価値があるのか?
・「テクノロジー」と「共創」で変える!変わる! 【未来の防災】
・外国人在住者の言葉の壁をGovTech視点で課題解決するには

この分科会にも、たくさんの人が引き続き参加してくれたのは嬉しかったです。素敵な参画の姿がありました。

議論の内容は、フェイスブックグループで共有されています。

このほかにも、UDトークの導入やキッズコーナーの設置など、随所にインクルーシブな設計がされておりました。

これからが始まり。参加していこう!

2019年が本当にGovTech元年になるには、先日参加していた皆さんや、これを読んでくれたあなたが、実際に成果を出すことが必要です。私も、Code for Japan としても神戸市職員としても、この火を消さないように引き続き頑張っていこうと気持ちを新たにしたカンファレンスでした。

最後に、ネクストアクションをリストにしてみました。この波に乗りたくなった人はぜひご参加を!

・神戸市で何かやりたい!
→実は、神戸市多名部チームがWantedlyでプロマネを募集しています。ぜひ応募や応援をお願いします!
→2月13日Update: 東京勤務のチーフ・エバンジェリストの募集が始まりました!

・Code for Japan で活動したい
Code for Japan の Slack チャンネルに参加して、自己紹介をぜひ!

・各地のCode for の活動を知りたい
あなたの街のCode for コミュニティをチェック!(なければ立ち上げましょう!)
→今年9月に、Code for Japan Summit という、日本最大規模のシビックテックカンファレンスもあります!

・自分の活動に仲間を集めたい/何かの活動に参加したい
→2ヶ月に1回、ソーシャルハックデー という1Dayハッカソンをやっています。誰でも参加できますのでぜひ!

・シビックテックについてもっと知りたい
シビックテックオンラインアカデミーというオンラインセミナーをやっていますのでご参加ください(無料です!)

・Code for Japan の活動をフォローしたい
→Code for Japan のフェイスブックグループフェイスブックページをフォロー願います

・(企業の方へ) 自治体と何かやってみたくなった!
→神戸市は、Urban Innovation Kobe を引き続き続けていきますので、来期ぜひご応募ください!逆提案もやると思います。
→UIKとは形が違いますが、Code for Japan は地域フィールドラボという人材育成プログラムを通じて、自治体との協働機会を提供しています。ご興味あればぜひご連絡ください。

・(自治体の方へ)UIKをやってみたい!
→ご相談にのります。ご連絡ください。

・(自治体の方へ)相談に乗って欲しい
→上記の地域フィールドラボや、データアカデミーなど、色々なプログラムがあります。ぜひお気軽にご相談ください

というわけで、皆さん頑張っていきましょう!

Happy Civic Hacking!

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