はじめに
Civic Tech Fun! Fun! Report! 2025年8月号は、Code for Giin、Code for Japanの2団体のレポートを掲載しています。
Code for Giinからは、8月2日に慶應義塾大学で開催されたデジタル民主主義サミット2026の参加報告。国政5会派の議員がそろってブロードリスニングの実践を語る全体会から、市民参加プラットフォームを100以上の自治体に入れてきた現場の話まで盛りだくさんの内容を八木さんに書いていただきました! Code for Japanからは、横浜のニュースパークで開いたコミュニティノートのワークショップについてお伝えします。
今回も各地のFunFunレポートをお楽しみください! 協力:八木さん(Code for Giin)
Code for Giin
デジタル民主主義サミット2026(Digital Democracy Summit 2026)
CodeFor議員のやぎーん(八木)です。今回は、8月2日に開催されたデジタル民主主義Summit2026について参加報告をします。内容が盛りだくさんすぎて書ききれないので、3つに絞って報告します。
全体会「国政からみるブロードリスニングの実践」
| イベント名 | デジタル民主主義サミット2026(Digital Democracy Summit 2026) |
| 開催日時 | 2026年8月2日(日)10:30〜11:30 |
| 会場 | 慶應義塾大学 三田キャンパス 主会場(北館ホール) |
| 形式 | 全体会 |
| モデレーター | 鈴木健 氏 |
| 登壇者 | 伊藤たかえ 氏(国民民主党・参議院議員/同党コミュニケーション統括本部長) 塚田隆 氏(公明党・参議院議員/党科学技術イノベーション推進事務局長、オンライン参加) 斎藤アレックス 氏(日本維新の会・衆議院議員/政務調査部長、オンライン参加) 川崎ひでと 氏(自由民主党・衆議院議員/デジタル大臣政務官・内閣府大臣政務官) 安野貴博 氏(チームみらい党首・AIエンジニア・小説家) |
概要:国政政党5会派の実務担当者・議員が一堂に会し、それぞれが実践する「ブロードリスニング」(AI等を活用し、幅広い民意をデータとして収集・分析する手法)の取り組みを共有するセッション。各党の紹介の後、モデレーターの鈴木健氏が論点を掘り下げる形式で進行し、後半では「各党バラバラに行うのではなく共通プラットフォーム化すべきか」「政府・国会主導で実施すべきか」といった制度設計上の論点や、人材・データ分析体制の課題、バイアスや透明性の確保といった実務的な論点まで踏み込んで議論された。
所感:5つの会派がそれぞれの実践を率直に語る貴重な機会であり、特に自民党の川崎氏が「テクノロジー活用では最も遅れている政党」と自ら認め、議事録の未データベース化という構造的課題まで踏み込んで説明した点は、他党にはない率直さが印象的であった。また、公明党の「12万件集めても6項目にしか絞り込めないもどかしさ」や、国民民主党の「エンジニア確保に苦労している」という実務的な悩みの共有は、ブロードリスニングを制度として定着させる上での共通課題を浮き彫りにしていた。草津市議会での市民の声の集約・分析のあり方を考える上でも、①目的(マーケットインではなく政策への「意味づけ」を伴う活用)を最初に明確化すること、②分析の透明性(使用モデル・プロンプトの公開)を確保すること、③統計的代表性のない手法であることを前提に世論調査等と組み合わせて補完的に用いることの3点は、そのまま自治体レベルでの実践にも応用できる重要な指摘であった。
分科会「過信と諦め、二つの『デジタル民主主義』幻想 ― 国内外100自治体の現場からの報告」
| 日時・会場 | 2026年8月2日(日)13:30〜14:10 慶應義塾大学三田キャンパス(第2会場) |
| 登壇者 | 栗本 拓幸 氏(株式会社Liquitous 代表取締役CEO) 松本 剛志 氏(大阪府スマートシティ戦略部 戦略企画課 課長) 司会・関治之(Code for Japan) |
概要:デジタル民主主義には「ツールを導入すれば参加が生まれる」という過信と、「市民の声を集めても政策には届かない」という諦め、二つの幻想がある。Liquitous社が国内外100以上の自治体等に実装してきた市民参加プラットフォーム「Liqlid」の6年間の現場実践から、この二つの幻想の実態を検証する内容であった。
質疑応答:共感数の多い質問・コメントが順に取り上げられた。最も共感を集めたのは、「行政の市民の声の取り上げ方を見ると、絶望を感じます」という質問。栗本氏は、対応が不十分な自治体が多い現実を認めつつ、現場に根気強く入り、声の意味や幅を丁寧に伝え、フィードバックを重視することでしか状況は変わらないと応答した。
所感:パブコメが実質的に「もう変えられない段階」で行われている構造的問題や、早期段階からプロセスを開く豊岡市・鎌倉市の事例、対面とオンラインの参加層の違いを踏まえた福知山市の使い分けは、本市の市民参加のあり方を検討する上で参考になる。「技術は中立ではない」という指摘や、地方自治法第1条『民主的にして』の側の未着手な行政改革という論点も、デジタル技術導入を目的化せず、何のために・誰のために開くのかを問い続ける必要性を示すものであった。
分科会「AI時代の民主主義のリスク ― 日本語情報空間とLLMポイズニング」
| 日時・会場 | 2026年8月2日(日)15:00〜15:40 慶應義塾大学三田キャンパス(第2会場) |
| モデレーター | 陣内一樹 氏 |
| 登壇者 | 市原麻衣子 氏(一橋大学/専門:民主主義と国際政治、情報空間の脅威分析) 宮﨑将 氏(早稲田大学/専門:計量政治学) |
概要:LLMポイズニング・グルーミングの脅威、中国関連ナラティブへのAI応答の言語差、衆議院選挙期のAI推薦実験、について登壇者からの報告・説明があった。
- ファクトチェックは「データボイドを埋める」観点で有効だが、機関自体が党派性のある引用元に依存するリスクもある。「すべてが偽情報」という過度な警戒は社会の分断を助長し、逆に政府・メディア不信は民主主義の協力基盤を損なう、という両義的リスクが指摘された。
- 対応主体は政府と一体化せず「市民社会」が担うことの重要性が強調された(政府主導だと立場のラベルが貼られ機能不全になりやすい)
- 欧米の対策はロシア型(人力・SNS発信主体)を前提に設計され、中国型の自律的AI影響工作には必ずしも有効でない。日本は台湾等と独自の対応枠組みを構築する必要がある。
- AIが日常に不可避に浸透する中、利用者がAIモデルを主体的に選ぶ余地は既に乏しく、政策・ビジネス利用の場面でAIの挙動を継続的に測定・監視するガバナンス体制の必要性が語られた。
参加したセッション全体を通しての感想
今回参加した7つのプログラムを通じて印象に残ったのは、「ブロードリスニング」や「AI活用による政策形成」が、もはや一部の先進的な取り組みではなく、国政・自治体・民間の各レベルで同時多発的に実践段階に入っているという点である。一方で、その実践のどれもが共通の課題に行き着いていたことも強く印象に残った。 自分自身の議会活動・地域活動への示唆として、①声を集める前に「その声を何のために、どの段階で使うのか」を最初に明確にすること、②分析手法やツールの選定・運用の透明性を確保すること、③統計的代表性のない手法であることを前提に、既存の手法(世論調査・審議会等)と組み合わせて補完的に用いること――この3点は、草津市議会での市民の声の集約や、合意形成のあり方を考える上でも、そのまま応用できる指摘だと感じた。
Code for Japan
コミュニティノートのワークショップを横浜で開催
8月23日(日)、横浜のニュースパーク(日本新聞博物館)で、コミュニティノートのワークショップを開きました。法政大学の藤代裕之研究室によるRISTEXニューストラスト・プロジェクトの研究成果共有イベント「信頼できるニュースをみんなでつくろう。」の一枠をお借りして、藤代先生とCode for Japanの共同開催です。
前半はCfJが集めたデータの報告。令和8年熊本地震のノート1,407件と、2026年沖縄県知事選のノート92件(いずれも公開・評価中を問わない全件)について、どんな言説にノートが付き、その根拠に何が引かれていたかを見ていきました。おもしろいのは、参照先の顔つきが災害と選挙でまるで違うところです。災害では気象庁や内閣府防災といった公的機関が上位に並ぶのに、選挙では報道機関だけで参照先の半分(50.6%)を占め、しかも産経・琉球新報・沖縄タイムスが揃って顔を出します。同じ論点に、立場の違う媒体が根拠として引かれているわけです。
後半は参加者に手を動かしてもらうワーク。実在する投稿4本を出して、その主張を裏付けられる引用元を自分で探してもらいました。狙いは真偽を見分ける技術ではなく、「この論点は、どこの誰なら裏付けられるのか」を探す力を持ち帰ってもらうことです。「見つからなかった」も成果として扱う、という前提で始めました。
5〜10名を想定していたところ、当日は23名。学生さんにも多く来ていただきました。「どこに注目すればいいか迷う」という声もいただいたので、ダッシュボードの見せ方はこれから手を入れます。同じ内容を8月29日(土)に大阪・関西大学梅田キャンパスでも実施しました。
ノートは誰でも検索できます。気になるテーマがあればぜひ触ってみてください。
