偽・誤情報を継続的に観測する「ナラティブ観測所」開始

2026.09.18 | 活動レポート

Code for JapanはSEARCHLIGHT株式会社とともに、オンライン空間の偽・誤情報を横断的・継続的に観測する場「ナラティブ観測所」を2026年6月に始めました。月1回のペースで、報道関係者・研究者・実務者が集まる勉強会を開いています。これまでの2回を振り返りながら、活動の中身を紹介します。

なぜ「観測所」なのか

偽・誤情報のナラティブ分析は、各団体が独自の手法で取り組んできました。ただプラットフォームや形式ごとに分析が閉じており、横断的な比較や、言説の変化を追う時系列の観測は十分に行われてきませんでした。

Code for JapanはXのコミュニティノートを分析するツール「BirdXplorer」を開発・運用し、SEARCHLIGHTはYouTubeやTikTokといった動画プラットフォーム上の主張の分析に取り組んでいます。この2者が分析結果とインサイトを持ち寄り、月次で共有する場を作れば、単発の分析では見えない変化を捉えられるのではないか。それがナラティブ観測所の出発点です。

名前の「観測所」は、単発の検証ではなく同じ地点から継続的に観測することを表しています。事実の真偽を個別に検証するだけでは、点をつなぎ合わせて作られる物語、すなわちナラティブの全体像は見えません。複数のプラットフォームにまたがって、点がどう線になるかを見ていきます。

進行役の2人

毎回の司会進行を務めるのは、Code for Japan副代表理事の陣内一樹とSEARCHLIGHT代表取締役の瀬戸亮です。

陣内一樹 Code for Japan副代表理事。Xのコミュニティノートデータを活用した分析ツールBirdXplorerの開発・分析を担当し、2025年の参議院選など選挙時のコミュニティノート分析にも取り組りくむ。総務省の偽・誤情報対策実証事業にも採択されている。

瀬戸亮 株式会社SEARCHLIGHT代表取締役。インターネット広告業界を経て2023年に独立。デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)エグゼクティブアドバイザー、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)アドバイザーを兼任し、令和7年度の総務省偽・誤情報対策実証事業にも採択されている。

これまでの2回で見えてきたこと

第1回(6月25日実施)は、両者のモニタリングの「型」を共有する回になりました。Code for Japanからは、BirdXplorerを使ったXのコミュニティノートの月次での定点観測について紹介しました。高インプレッション帯の多くを広告・PR・スキャムが占める構造や、下妻市長の死をめぐる陰謀論・移民デマが2,500万インプレッション超まで広がった事例を挙げました。SEARCHLIGHTは、事実言明という「点」を恣意的に結んだ「線」がナラティブだというフレームを提示し、点の真偽検証だけでは全体像を捉えられないという問題提起を行いました。

第2回(8月4日実施)は、東京大学の澁谷遊野准教授と、YouTube上の政治情報流通を研究するスタッブ シンシア由美子さんをゲストに迎えました。2026年衆議院選挙の動画分析では、収集した動画のうち個人・非公式発信者によるものが件数の65.78%・総再生数の77%超を占め、既存映像の再編集を中心とした「切り抜き」が流通の主役だったことが示されました。ただし、この差のショート動画かどうかの違いも関係しており、条件をそろえて比較すると切り抜き動画であること自体の影響は再生数で1.7倍程度まで縮小するとの分析も示されました。それでも説明しきれない差は残るものの、印象で語られがちな「切り抜きの影響力」に統計的な裏付けを添える発表になりました。

Code for Japanの熊本地震コミュニティノート分析では、ファクトチェック団体とコミュニティノートが同じ根拠から同じ誤判定に至った事例が見つかり、検証のあり方そのものに一石を投じています。SEARCHLIGHTの発表は2本立てでした。台湾関連の誤情報を分析した先行研究をもとに、誤りが暴かれた後に訂正情報を出しても、拡散のスピードに追いつけないという構造的な限界を指摘しました。もう一つは2026年杉並区長選挙のSNS分析で、陣営間の応酬が目立つのはXだが、過激な投稿が実際に生まれやすいのはYouTubeやWebだったというデータを示しました。

次回以降について

次回は、9月13日投開票の沖縄県知事選挙を主なテーマとして取り上げる予定です。Code for Japan・SEARCHLIGHTとも現在モニタリングを進めており、告示前後でナラティブがどう動いたかを扱います。


参加にご興味のある方へ

ナラティブ観測所は招待制のクローズドなコミュニティとして運営しています。本レポートを読んで関心を持っていただいた報道関係者・研究者・実務者の方は、以下の問い合わせフォームよりご連絡ください。運営側で内容を確認したうえで、ご案内させていただきます。

問い合わせフォーム:https://forms.gle/zDAe4M2jhbFzJ4SGA

運営:Code for JapanSEARCHLIGHT株式会社

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