浜松市におけるデジタル変革人材育成の軌跡

2026.05.15 | 活動レポート

Code for Japan(CfJ)は、令和7年度に浜松市役所において「デジタル変革人材育成研修」を実施しました 。

「デジタルはもはや特別な言葉でも能力でもない。大事なのはX(変革)だ」という確固たるポリシーを持つ浜松市。

その浜松市においてCfJが行った、組織の縦割りを解消し、連携を促進するためのマインドセット醸成とコミュニティ形成を重視した研修の魅力と実践的な成果をご紹介します 。

階層別の実践的なアプローチ

浜松市では、組織全体の変革を促すため、研修には役割に応じた3つのレベルが設定されています 。

  • 庁内DXの中核として、庁内横断でステークホルダーが多く、利害調整が複雑で、不確実性の高いプロジェクトをチームで推進するDXコアメンバー
  • 現場の変革をチームでリードするDXメンター
  • 次のDXメンターを狙うデジタル変革人材候補

本レポートでは、DXコアメンバーとDXメンターの研修の様子についてお伝えします。

浜松市は3階層に分けて研修を実施

浜松市は3階層に分けて研修を実施

組織文化を変える「アジャイル思考」と「心理的安全性」

本研修の最大の特徴は、知識を「知っている」から「実務で使える」状態へと引き上げる点にあります 。

DXコアメンバーは、プロジェクトを推進するマネジメント手法を中心に学びました 。

講座は、プロジェクトマネジメントの世界的な標準ガイドラインである「PMBOK」をベースにしていますが、PIMBOKは内容も少々(かなり?)難解なので、ワークも多く交えながら、わかりやすく学んでいただけるように工夫しています。

最終日には、それまでに学んだことを活かしながらアジャイル手法で「未来の動物園の試作モデル」を作り上げるというワークを実施しました。

「今日のワークは、これを使ってやります。」というセリフと共に登場した紙粘土に戸惑いながらも、意外な造形的才能を発揮するメンバーもいて、終始賑やかなワークとなりました。

同じテーマ・同じプロセスを辿りながらも、3つのチームが作り上げる動物園のプロトタイプはそれぞれ個性豊かで、「プロジェクトは生き物」ということを改めて感じました。

アジャイル手法で未来の動物園のプロトタイプを作成するワークの様子

アジャイル手法で未来の動物園のプロトタイプを作成するワークの様子

DXメンター研修では、公募で集まった26名のメンバーが、実際の庁内課題(文書保管、会議の効率化など)をテーマに6つのチームに分かれて長期間のグループワークを実施しました 。

トピックとしては

  • 仮説を立てる前には適切な問いが重要という視点から、「How Might We」というフレームワークを使って、「どうすれば私たちは〜できるだろうか」という前向きな問いに変換する手法を学びました 。ある受講者は、初めは結論ありきの思考からなかなか抜け出せませんでしたが、講師のアドバイスにより、課題・仮説設定の精度を高めることができました 。
  • 「やめることから考えるDXワークショップ」ではデザイン思考の「ECRS」や「PPCO法」というフレームワークを使って、自分達の考えやアイデアをまとめていく手法を学びました。
  • 自分たちが立てた仮説に対して検証を行うフェーズでは、的確なデータを取るためのアンケート設問に悩んだり、庁内で保有するデータを活用した分析に四苦八苦しながらも、受講者は着実に仮説検証とリサーチを行っていました 。
  • アジャイルな取組みで重要となる振り返りの活動にも「YWT(やったこと、わかったこと、次にやること)」というフレームワークを使い、「反省ではなく未来志向の振り返りという視点の獲得ができた」という感想が得られました。
DXメンターは、グループごとに様々なワークを実施しました

DXメンターは、グループごとに様々なワークを実施しました

受講者からは「未完成でも前に進める勇気を体得できた」という声が上がっており、「失敗してはいけない」という公務員特有の風土に対し、心理的安全性を確保しながら試行錯誤できる環境を提供したことが、大きな意識変容を生みました 。

DXメンターの最後は「3分市長ピッチ」

DXメンター研修の集大成である最終回(Day8)は、受講者が市長に対して直接、業務変革のアイデアと研修を通じた学びを報告する3分ピッチを行いました 。

Day7では、研修の最初にチームごとの模擬プレゼンを実施。

最初は、時間に収まらなかったり、声のトーンが一定で動きがなく、結局一番伝えたい内容がなんなのかがわかりにくかったりしましたが、受講生が相互に感想や意見などを言い合うことで、3時間ほどの間にプレゼンのレベルがぐっと向上。

そして、いよいよ本番。市長との距離は2m。緊張の時間です。

  • 516名もの職員から集めたアンケートを分析して「文書電子化の壁」を解像度高く明らかにしたチーム
  • 正確なデータを得るためのアンケート設計の重要性を提示したチーム
  • 窓口業務受付データを詳細に分析し、窓口業務のネックが受付と審査にあることを数字で明らかにしたチーム
  • デジタルを使った備品管理の効率化を研究しはじめたけれど、政令市の7割は所属による備品検査を行っており、物品統括課が備品検査をしている浜松市はマイノリティと知って衝撃を受けた体験を語ったチーム

全チームが、それぞれがこれまでの学びを如何なく発揮して、Day7よりさらにブラッシュアップされた活き活きとしたプレゼンをしていた様子が印象的でした。

DXメンターの市長ピッチ:それぞれのチームの個性が爆発!

DXメンターの市長ピッチ:それぞれのチームの個性が爆発!

部署を超えた「横のつながり」の創出

社会の変化が早い時代に、変革を推進する人材の育成は大切です。

しかし、そういう人材は時に「めんどくさい」と思われて、組織内で孤立しがちです 。

本研修では、コミュニケーションツール「Slack」を活用し、オンラインでの伴走支援と今後に繋がるようなコミュニティ形成を行いました 。実務上の質問対応だけでなく、気軽な雑談や悩み相談のチャンネルを設けることで、部署を超えた「横のつながり」を生み出しました 。受講者同士で積極的にリアクションを送り合い、自主的にチーム間の連携を行うなど、自発的な協働の文化が育ちました 。

アンケート結果

DXメンター研修では、事前・中間・事後にアンケート調査を行い、DXに対する知識・理解や実践イメージについて定量的な成果を測定しました。

研修前の平均値は2.713(≒どちらでもない)でしたが、中間の平均値は4.300(≒ややそう思う)、研修後の平均値は4.704(≒そう思う)と着実に上昇していることがわかります。

DXメンター:アンケートは事前・中間・事後で測定

DXメンター:アンケートは事前・中間・事後で測定

受講生ごとのデータも概ね全てのメンバーの数値が上昇していることが見て取れます。

DXメンター:メンバー毎のデータ

DXメンター:メンバー毎のデータ

「人が人を育てる」持続可能な変革へ

本研修は、単にデジタル技術の講習会ではなく、組織内のコミュニケーションや、課題への向き合い方を根本から見直す文化変革のプログラムであり、CfJは、研修の「卒業生」が次年度以降の講師やサポーターとして関わる「人が人を育てる」持続可能な変革サイクルが生まれることを願っています 。

行動の先にあるのは「成功か失敗」ではなく「成功か成長」です。

これは市長ピッチの後に、DXメンターの皆さんに伝えた言葉ですが、成功も成長も行動の先にしかないということを、今回研修に参加していただいた皆さんには十分に感じていただけたように思います。

皆さん、本当にお疲れさまでした。


庁内のデジタル化や組織風土の改革に課題を感じている自治体の皆様、Code for Japanの実践的な研修を通じて、自走するデジタル変革人材を育て、新しい行政の形を共に作っていきませんか。

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