今治に新しい海風を起こしたい―Code for Imabari の挑戦

2024.12.17 | 活動レポート

瀬戸内海のほぼ中央に位置する愛媛県今治市。風光明媚な景観と歴史的遺産を誇り、造船などの日本を代表する産業を持つ県内第2の都市です。しかし近年、他の多くの自治体と同様、人口減少や若者の流出といった課題に直面しています。このような中、「デジタルの力で今治を未来につなげよう」と立ち上がったのが Code for Imabari です。
 
今回は、Code for Imabari の代表理事である森さんに、活動を始めた背景や現在進行中のプロジェクト、そして今後のビジョンについてお話を伺いました。

—— Code for Imabari を立ち上げることになった、きっかけを教えてください。

 
私は今治市で生まれ育ちましたが、大学進学とともに上京し、それからずっと東京で暮らしています。そんなある日、10年ほど前になりますが、突然母校の中学校から ”閉校記念式典” の案内が届きました。
 
出身の中学校は今治市の中心部にあった学校。かつて多くの生徒が通い、活気ある学校だったはずです。しかし、その案内には、子どもの人数が減少し、市の中心部の小中学校が統廃合され、その結果、母校が閉校することになったと書かれていました。
 
それは自分にとって衝撃的で、その知らせを受け取った瞬間、「ああ、これは自分のせいだ」と思ったんです。
 
寂しいとか悲しいという気持ち以上に、「生まれ育った今治を離れ、東京で家庭を持ち、そのまま戻らない自分のような存在がたくさんいる。それが積み重なった結果が、この現実を生んでいるのではないか」と感じました。申し訳なさと、どうにかしたいという責任感が入り交じり、地元のために自分にできることは何だろう、と考えるようになりました。
Code for Imabari 代表理事 森さん
Code for Imabari 代表理事 森さん
 
それから数ヶ月して、内閣官房IT総合戦略室(現デジタル庁)に出向し、地域のDX(デジタル・トランスフォーメーション)に関わる仕事をすることになりました。民間企業の視点とは異なり、行政の立場から地域課題に向き合うことができたのは、私にとって大きな経験でした。
 
そこでは、関治之さんをはじめとするオープンデータの有識者とご一緒に仕事をする機会もありました。当時ちょうど Code for Japan を立ち上げられたばかりの関さんから ”シビックテック” という理念を教えていただき、この考え方に強く共感しました。そして、「もし今治に Code for のブリゲードを作るなら、自分がやりたい」と心に決めていました。
 
その後、会社でリモートワークの導入と複業制度が進んだことで、東京と今治の二拠点で活動する環境が整い、2024年8月に念願だった Code for Imabari を立ち上げることができました。
 
 

—— 具体的にどのような活動をされているのでしょうか?

 
「デジタルの力で今治をもっと元気に」をミッションに掲げて活動しています。特に取り組んでいるのが、記録として残りにくい ”地域の記憶やストーリー” を掘り起こし、それを未来に生かすためのプロジェクトです。
 
「この場所でどんな暮らしがあったのか」や「人々にとってどんな意味のある場所だったのか」というような記憶は、時が経つにつれて失われてしまいます。それを見えるかたちで共有し、未来に引き継ぐことが私たちのテーマです。
 
たとえば、今治今昔写真プロジェクトでは、地域の人々が持ち寄った昔の写真や思い出を収集し、それをデジタル化して共有する活動を進めています。このプロジェクトでは、写真をきっかけに地域の過去と現在をつなぎ、住民同士が地域の歴史や文化を再発見する場を作っています。
 
今治今昔写真プロジェクト
今治今昔写真プロジェクト
 
さらに、オールドイマバリまちあるきマップでは、これらの記憶やストーリーになった重要なスポットを地図上に記録し、今治を訪れる人々が歴史や文化を体験しながら街を歩ける情報を提供しています。このマップは観光客だけでなく、地元住民にとっても地域の魅力を再確認する貴重なツールとなっています。
 
オールドイマバリまちあるきマップ
オールドイマバリまちあるきマップ
 
また、2024年11月には、こうした記憶を体験型で活用する試みとして THE GAME in Imabari というクエスト形式のゲームイベントを実施しました。NFT(※)を使い、参加者が地域の歴史や文化に触れながら楽しめる機会を創出しました。
 
※NFT:Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略。世界に一つだけのデジタル資産のこと。
THE GAME in Imabariのキャラクター 座迎夢ちゃん
THE GAME in Imabariのキャラクター 座迎夢ちゃん
 

—— THE GAME in Imabari について、もう少し詳しく教えていただけますか?

 
THE GAME in Imabari は、今治城とその外堀だった金星川を舞台に、街歩きとNFT収集を組み合わせた3日間限定のイベントです。参加者は、橋に設置されたICタグステッカーをスマートフォンでスキャンしながら、NFTを集めていきます。ゲームを楽しみながら、地域の歴史や文化に触れられる内容となっています。
 
初日には、今治の街歩きの達人である小池さん(BAR ROKUSAN マスター)が案内役を務め、参加者全員でスマートフォン片手に川沿いを巡りました。金星川がどのように今治の街とともに歩んできたのか、橋それぞれが持つ歴史的背景など、小池さんの解説を聞きながら進むと、普段見慣れた景色が新鮮に映り、何気ない町並みが大切なものに感じられました。
 
2日目と3日目は、ガイドをつけず、参加者がそれぞれのペースで体験いただける形式としました。NFTを7つすべて集めた方には、地元の和菓子店「松月堂」から名物の ”たいこまん” をプレゼントする特典もご用意し、その楽しみもあって多くの方にご参加いただけました。
 
THE GAME in Imabari の様子
THE GAME in Imabari の様子

——みなさんの反応はいかがでしたか?

 
ありがたいことに、大好評でした。SNSやメールで、「金星川を巡ると、思い出の引き出しがどんどん開いていった」「学んでみると、今治って本当に面白い。次回も楽しみだ」などの声を寄せていただきました。
 
今回の体験は参加者の思い出として残ると同時に、それを象徴するNFTが未来へと引き継がれます。金星川を始めとする街の風景が、現代の街並みと過去の歴史をつなぎ、さらに未来へとつながる存在であることを、イベントで実感していただけたのではないでしょうか。
 
活動を進めていると、「昔は良かったな」という声を耳にします。しかし、私たちはそれだけで終わりたくありません。過去を振り返るだけでなく、それを未来へとつなげることが重要です。THE GAME は、その一歩を進めるきっかけになりました。
 
notion image
 

——今後、Code for Imabari として、どのような活動を考えていらっしゃいますか?

 
これからの活動については、大きく2つの方向性を考えています。
 
まず1つ目は、THE GAME in Imabari の仕組みを他の地域にも広げることです。地域活性化は ”人の取り合い” になりがちですが、どの地域にも今治のように引き継いでいきたい場所や記憶があるはずです。このイベントをひとつの事例として、それを未来につなげる仕組みを作り、地域を超えて日本全体で地域の魅力を再発見する取り組みを展開したいと考えています。
 
2つ目は、今治市のオープンデータを増やすことです。現在、今治ではオープンデータの整備が十分ではありません。行政に働きかけ、地域の情報をよりオープンにし、誰もが活用しやすい仕組みを整えることを目指しています。これは私がこれまで培ってきた経験を活かせる分野です。データを公開するだけでなく、使いやすい形で整備することで、地域の課題解決や魅力発信に役立てたいと考えています。
 
実は今、今治では若い世代が増える兆しが見えています。2024年3月には岡山理科大学の今治キャンパス第一期生が卒業し、4月には新しい試みで注目されているFC今治高校が設立されました。Code for Imabari の活動を通じて地元の高校生や大学生と話す機会もあるのですが、中には「今治が好きで、もっと良くしたい」という強い思いを持つ子たちもいるんです。彼らと一緒に何ができるかを模索しているところです。
 
若い世代の熱意やエネルギーを受け止め、彼らとともに地域の未来を描いていくことも、今後のCode for Imabari の重要な役割です。あらゆる世代を巻き込み、地域を超えた連携とデジタル技術の活用を通じて、今治の可能性をさらに広げていきたいと考えています。
 

—— 最後に、一緒に活動をしたいという方へのメッセージをお願いします。

 
Code for Imabari では、同じ思いを共有し、地域をもっと元気にしたいという方々とともに活動したいと考えています。私たちの取り組みに興味を持ってくださった方、ぜひ一緒に今治の未来を描いていきましょう。

Code for Imabari の活動は以下をご覧ください。

 

Code for Japan のブリゲードについて

 

Think Together,

Create Together.

Code for Japan Logo

Activities

Civic Tech ProjectsCivictech Challenge Cup U-22Civictech Accelerator Program (CAP)DecidimMake our City

About Us

Community

About out Slack Work Space About out Notion Community PortalEvent Info

SNS

© Code for Japan

SecurityPrivacy PolicyCode of Conduct

© Code for Japan