Gussuri

睡眠記録のデジタル化「Gussuri」

シチズンサイエンスとシビックテックの挑戦

「Gussuri(ぐっすり)」は、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)認知行動療法センターと、Code for Japan、大阪大学、九州大学、福島県立医科大学、中央大学、富山大学、NCNP睡眠障害センターなどの医師や心理士、睡眠専門家、研究者、当事者、エンジニア、デザイナーなどが睡眠とメンタルヘルスにまつわる知見をラジオ形式で提供するポッドキャスト「バク睡らぢお」から生まれたシチズンサイエンス的なアプローチから生まれたプロジェクトです。

睡眠記録とは

睡眠記録とは、布団に入った時刻、眠りについた時刻、目覚めた時刻、布団から出た時刻など睡眠について記録していくシートです。途中で目が覚めてしまった場合や、日中に居眠りをした場合なども書き込みます。1〜2週間程度、毎日記録していくことで、不眠などの悩みがある場合、自分の睡眠のパターンや癖を把握したり、診察時にこれらの記録に基づいて説明したりすることができます。
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センターでは、これまでにも世界標準の既存睡眠記録用紙を「見やすく」「書きやすく」する取り組みとして、デザインやカラーバリエーションで記入者の行動につながるようにというサポートにも取り組まれていました。
 

睡眠記録のデジタル化

ポッドキャスト「バク睡らじお」の中で、認知行動療法や睡眠について研究している専門家と、睡眠について困りごとを抱える当事者エンジニア・デザイナーのシチズンサイエンス プロジェクトとして、中島 俊 氏(博士(医学)/公認心理師/臨床心理士/国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター 臨床技術開発室 室長) 井上 真里 氏(公認心理師/臨床心理士/国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター/北里大学大学院)らと共に、睡眠課題にアプローチするための最初の段階で臨床現場で用いられている「睡眠記録シート」を取り上げた際「紙に毎日記録するのも、それを持って診察にいくのも面倒」という当事者の声から「デジタル化して、アプリにしてみたら記入・記録の共有が楽になるのでは」と始まったのが「Gussuri(ぐっすり)」のプロジェクトです。
システムの導入や監視、トラブル対応などで深夜の作業が発生しやすいエンジニア、集中できる作業時間を確保するために夜更かしになりがちなデザイナーなど、当事者として睡眠の困りごとに興味関心があるメンバーと研究者あるいは臨床現場で患者さんと関わっている専門家のメンバーがそれぞれの視点から意見を出し合います。デザイン案を考え、コーディングに参加しています。世界睡眠デー(2023年3月17日)に合わせてプロジェクトをお披露目し、翌年の世界睡眠デー(2024年3月17日)にアプリ版の公開となりました。
 

公衆衛生や健康・福祉領域でわたしたちができること

2021年のOECD調査によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分と33カ国の中でも最低で、全体平均(8時間27分)を1時間以上も下回っています。睡眠不足がもたらす経済損失は15兆円とも言われており、労働効率の低下、メンタルヘルス課題などに直結するだけでなく、子どもの脳機能・発育の妨げにもなる問題です。国内には1,860万人の不眠の症状を抱える人がいますが、実際に治療を受けているのは590万人で、精神科に通うことや睡眠薬を飲むことに抵抗感を感じている人は少なくありません。今回は、不眠や寝不足に困っている人たちに対して支援策を提供するのではなく、前段階のセルフモニタリングとして、「睡眠リズムはどんなパターンなのか」「睡眠時間は足りているのか」などを記録しながら考えるための睡眠記録シートのデジタル版を提供します。

パーソナルヘルスレコードを市民がつくり、市民が活用する未来

個人の健康、組織経営などさまざまなシーンで注目されている「well-being(ウェルビーイング)」の構成要素しても大きな要因となる睡眠に着目しています。その改善や行動変容を考える前段階として、そもそもの実態を個人や組織単位で把握するために用いられる睡眠記録シートが現状紙ベースであることに課題意識を持ちます。誰でも簡単に手持ちの端末で記録し、そのデータを必要に応じて専門家や家族に共有できるよう、オープンソースソフトウェアとして開発していくことです。自分たちの健康を自分たちで考え、組織単位・地域単位で健康や医療福祉ついてともに考え、ともにつくっていく機会づくりを提案していきます。
睡眠は子どもの発育、青年の作業効率や日中活動への影響、高齢者の認知症予防など、あらゆる年代の健康・福祉に関わる問題です。睡眠状況を把握するためのセルフモニタリングツールである睡眠記録シートのデジタル版「Gussuri(ぐっすり)」を開発することで、Personal Health Record(パーソナルヘルスレコード:個人の健康・医療・介護に関する情報)の取り扱いについて、市民が考え、市民がつくり、市民が活用するケース事例にもできるのではないかと考えています。
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セルフチェックから睡眠習慣や専門機関での受診へ

今回開発されたアプリは「睡眠記録」をスマートフォンなどから簡単に入力するための機能です。このアプリで入力したデータをもとに、自分の睡眠のパターンや癖を振り返ったり、専門機関に受診する際に持ち込んで相談したりすることもできると考えています。

シビックテックによるオープンソース開発

Gussuri(ぐっすり)は中島氏・井上氏や上記ポッドキャスト「バク睡らぢお」に参加するその他の専門家の方とのコミュニケーションの中で、研究者・臨床現場で実際に患者さんとのコミュニケーションで使う医療関係者の皆さんの視点からフィードバックをもらいながら設計を進め、デザインや開発については、Code for Japanが運営するシビックテックコミュニティのエンジニアやデザイナーの貢献により開発されました。現在もCode for Japanが主催する開発イベントである、「ソーシャルハックデー」を中心にプロジェクトは進行中です。また、2023年度に済州島で開催したFacing the Oceanではg0v台湾やCode for Koreaの皆さんにも英語・台湾華語・韓国語への多言語対応などにコントリビュートいただきました。
 
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gussuri(ぐっすり)は、営利目的での利用も含めて許諾される「MITライセンス」によりソースコードを公開・提供いたします。今後、実際に臨床現場で患者さんの睡眠記録を診療や支援に活用していこうと考えている専門家の方々や、睡眠にまつわる研究のために実験協力を募る方々、また地域単位でクラス人々の健康やウェルビーイングの可視化を検討されている自治体などを含め、さまざまな方とシチズンサイエンス・シビックテックのプロジェクトとして、ともに考え、ともにつくる社会を実践していきたいと考えています。企業や自治体などの皆様がソースコードをご活用される際は、利用規約をご確認ください。

Code for Japan Summitでのセッション

市民参加型の研究・開発プロジェクトとして展開していこうと考え、これまでもポッドキャスト配信、アプリ開発などの一連のプロセスについて、学会やシビックテックのカンファレンスで発表を行ってきました。

学会シンポジウムでの意見交換

  • 第22回日本認知療法・認知行動療法学会(シンポジウム)
    • Shun Nakajima, Mari Inoue, Toshiatsu Taniguchi, Mami Takesada, Yasutaka Ojio, Akina Noguchi, Fumiyo Oshima, Ayuki Joto【Symposia in the 22th Annual Convention of Japanese Association for Cognitive Therapy:Part 1】Collaboration among Citizens, Patients, and Various Experts to Achieve Inclusive Support
  • 第22回 認知療法・認知行動療法学会(ポスター発表)
    • 市民や当事者、医学専門家によるユーザーフレンドリーな睡眠記録アプリケーションの開発

gussuriプロジェクトに参加する

追加機能の実装やUX改善など、gussuriの開発は現在も継続しています。Code for JapanのSlackにてやりとりを行っていますので、ご興味のある方は #proj-gussuri に参加ください。Code for JapanのSlackに参加されていない方は、コミュニティの紹介ページにて参加方法をご確認ください。
 

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