g0v summit 2024 登壇者レポート

2024.06.11 | 活動レポート

台湾のシビックテックコミュニティg0v(ガブゼロ)では隔年(偶数年)にカンファレンスが開催されています。2024年は5月4(土)と5日(日)に台北にある中央研究院 人文社會科學館(Academia Sinica Humanities and Social Science Building)で開催されました。
コロナ禍はオンライン開催やハイブリッド開催だったこともあり、2018年から6年ぶりにSinicaの会場にCode for Japanメンバーが複数訪問し、それぞれのセッションで議題提供をしながらg0vメンバーのセッションにも参加しました。

g0vサミットの特徴

今年のg0vサミットには30カ国から800人規模の参加があり、台湾華語と英語のトラックが合計46ありました。そのためg0vサミットでは、台湾華語話者以外の参加者も楽しめるような工夫が随所に見られました。会場では、参加者がバッジやTシャツにシールを貼ることで、気軽にコミュニケーションが取りやすくなっていました。特に海外からの参加者にとっては、様々なステッカーが言語のサポートを提供しやすくしていました。
また、台湾華語のセッションでも、個人のデバイスで同時通訳を聞くことができるため、言語の壁を感じることなく参加できました。一部のワークショップでも同時通訳のサポートがあり、
Code for Japanのイベントでも毎回使用している「UDトーク」という日本の文字起こしアプリがスポンサーとなり、リアルタイムで文字起こしされた内容を複数言語に翻訳するサービスも提供されていました。
 

今年のg0vサミットのテーマ

今年のサミットでは、以下の5つの大きなテーマが取り上げられました。
  1. “Nerd Politics” vs. Digital Governance / 「ナード政治」とデジタルガバナンス
    1. このテーマでは、eID、個人データ保護、AI規制、デジタルプラットフォーム規制、デジタル暴力、デジタル主権などが議論されました。特に、「The Rise of Nerd Politics」の著者であるジョン・ポスティル氏による基調講演が注目されました。
  1. Data, AI, and Community Collaboration / データ、AI、コミュニティコラボレーション
    1. このセッションでは、オープンガバメント、ビッグデータ、クラウドソーシング、ジオデータ、オープンコースなど、データとAIがコミュニティとどのように連携できるかが議論されました。
  1. Grassroots, Open, Polycentric, and Communal Responses to Political and Technological Authoritarianism / 草の根、オープン、多元的で共同的な政治および技術的権威への対応
    1. このテーマでは、コミュニティガバナンス、デジタルレジリエンス、市民活動、デジタル市民防衛、オープンソースの精神などが取り上げられ、権威主義に対する草の根レベルでの対応が話し合われました。
  1. Digital Infrastructure Grounded in Empathy, Inclusiveness, and Plurality / 共感、包括性、多元性に基づいたデジタルインフラ
    1. このセッションでは、ネチケット、行動規範、デジタル極化、デジタルDEI(多様性、公平性、包括性)、デジタルリテラシーなどが議論され、デジタル社会における多様性と包括性の重要性が強調されました。
  1. Convergence of Technology and Social Issues / テクノロジーと社会課題の融合
    1. このテーマでは、SDGs(持続可能な開発目標)、ソーシャルエンタープライズ、デジタルトランスフォーメーション、イノベーション、教育、NGOなど、テクノロジーが社会課題にどのように対応できるかが議論されました。
今回のサミットには、Code for Japanから代表の関とスタッフの窪田、武貞が登壇しました。以下、それぞれのセッションの詳細です。

East Asian Civic Tech Communities Amid Global Democratic Backslide: Dialogues among Taiwan, Japan, and Korea

Hal Seki, Ohyeon Kweon and Jason Liu
サミット1日目のKeynoteセッションではCode for Japan代表の関、Code for Korea代表のOhyon氏、台湾のウィキメディア協会のJason氏による台湾、日本、韓国のシビックテックコミュニティに焦点を当てた対話が行われました。3国のシビックテックコミュニティは長年にわたり緊密に連携し、協力してきました。この対話は、3国の経験、発展の道筋、現在の課題を通じて、東アジアの民主主義の現状を照らし出し、コミュニティの未来の可能性を探る試みとなりました。
このセッションは、台湾ウィキメディア協会による「公民科技促進数位民主之資訊発展研析与推動」研究計画の一環として開催され、前半と後半の二部構成で行われました。
前半:地政学とシビックテックの役割
前半では、東アジアの地政学的な状況とシビックテックの関係について議論が行われました。特に、台湾、日本、韓国のシビックテックコミュニティがどのように連携し、地域の課題に取り組んできたかが話題となりました。g0vコミュニティの代表者10名が登壇し、それぞれの視点からシビックテックの重要性とその役割について意見を交換しました。
後半:東アジアに焦点を当てた対話
後半では、東アジアにおけるシビックテックコミュニティの現状と北朝鮮および中国との比較が行われました。三国の公民科技の発展経緯や現在直面している課題について深く掘り下げ、地政学的な衝突の最前線におけるシビックテックの役割が議論されました。参加者からも多くの質問が寄せられ、活発なディスカッションが展開されました。
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Youth-Led Innovation: Shaping the Future through Civic Tech

Tiff Lin, Saya Kubota and Sonja Fischbauer
サミット1日目の午前中に、Code for Japanの窪田がg0v jothon(台湾)のTiff Lin氏とOpen Knowledge Foundation(ドイツ)のSonja Fischbauer氏とともに、各国の学生向けシビックテックプロジェクトに関する90分間のセッションを行いました。
セッションではまずTiff氏が台湾のシビックテック開発コンテスト「sch001」について紹介し、台湾の学生がどのようにシビックテックに取り組んでいるかを説明しました。次にSonja氏がドイツの学生向けサマープロジェクト「Jugend hackt」について説明し、ドイツの若者が技術を活用して社会課題を解決する取り組みを紹介しました。最後に、窪田が日本の「Civictech Challenge Cup U-22」について説明し、日本の学生のシビックテックプロジェクトの紹介を行いました。
各国の現状を説明した後、3人はパネルディスカッションを行い、「デジタルシティズンシップ教育の定義と重要性」「デジタルシティズンシップ教育普及のための機会と困難」「もし自分が支援を受けた場合の普及方法」について議論しました。
それぞれの回答は、共通の課題や各国の状況に基づいたものであり、異なる視点からの貴重な意見が交わされました。
g0vやOpen Knowledge Foundationの活動の一環であるCode for Germanyとは、Code for All コミュニティを通じてつながっているので、今後もこのネットワークを大切にし、海外連携を強化していきたいと考えています。
 
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A cross between Citizen Science and Civic Tech

Mami Takesada and Shun Nakajima
2024年のg0vサミット2日目の午後、Code for Japanの武貞と筑波大学IIISの中島俊氏で登壇し、研究者とのコラボレーションが進んでいるシビックテックのプロジェクト事例と今後の展開について共有しました。
このセッションでは、市民が主導する技術コミュニティ(シビックテック・公民技術)と非専門家の市民が科学研究に参加する取り組み(シチズンサイエンス・公民科学)を組み合わせで、研究開発の社会実装への橋渡し・早期化、インクルーシブな社会の実現に向けて何ができるかをテーマにしました。
科学技術領域ではデータの不均衡について議論されることが多く、男性や白人を前提とした研究開発がこれまで進んでおり、顔認識技術における人種バイアスなどを含めて、アジア人、女性、子供、障害者などのデータ収集が不十分で、研究開発の成果を平等に享受できていない事実があります。近年、スタンフォード大学などによるジェンダード・イノベーションの取り組みや、多様性を研究データに反映するための工夫が進んできていますが、まだまだ発展途上段階であるため、アジアで最もジェンダー平等の国である台湾と協力して研究開発におけるインクルーシブな社会の実現に向けてアプローチがしたいと投げかけました。
Code for Japanでのシチズンサイエンスとシビックテックのコラボ事例としては
1.「家事分担コンシェルジュ」 アルゴリズムを用いて家事分担を可視化し、理想的な分担方法を提案するアプリ
2.「じぶんごとプラネット」気候変動を自分ごととして考えるために、生活スタイルから生じるカーボンフットプリントを計算し、脱炭素アクションを提案するツール
3.「gussuri」(睡眠記録に関するプロジェクト)
の3つについて紹介し、後半はgussriのプロセスについて、これまでのポッドキャスト配信でのアウトリーチ、「Facing the Ocean 2023(台湾・韓国・日本合同ハッカソン)」や「ソーシャルハックデー(日本での継続型ハッカソン)」で取り組んできたOSS開発、今後の展開に向けて、市民の健康データをどう扱っていくか、データの権利や管理方法の提示についての提案を共有しました。
今後も研究と開発、社会実装とフィードバックのループが良い循環となるよう、研究者と開発者が意見交換しながらともに考え、ともにつくっていくプロジェクトを進めていきたいです。
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今後の展望

g0v summit 2024は、世界各国から多様な参加者を迎え、デジタル社会の未来を見据えた議論と交流の場となりました。シビックテックの多様な側面が取り上げられ、各国の取り組みや課題が共有される中で、新たなコラボレーションの可能性が広がりました。特に、Code for Japanと他国のシビックテックコミュニティの連携は、国境を越えた協力の重要性を再確認する機会となりました。
さらに、8月には日本、台湾、韓国のシビックテックコミュニティによる合同ハッカソン「Facing the Ocean」が開催されます。このハッカソンは、各国の参加者が横浜に集まり、2日間の期間中、デジタル技術を駆使して地域や社会の課題に取り組むとともに、各国の関係強化にも繋がります。
今回のサミットで得た知見やネットワークを活かし、今後もシビックテックの発展に向けた活動を続けていきます。
 

ともに考え、

ともにつくる。

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