隠岐・海士町で離島ハッカソン
3月23日のソーシャルハックデー(プロジェクト持ち込み型ハッカソン)との同日開催で、島根県海士町において、海士町、AMAホールディングス、Code for Japanが共同し、島の地域課題を解決する第1回「島ッカソン」を開催しました。
人口減少、課題先進地域でチャレンジングな「海士町」
海士町は人口約2,300人の小さな離島です。関東や関西アクセスには米子空港(電車)→境港(船)→菱浦という、空路・陸路・海路の組み合わせで半日ほどかかります。
現在全国各地で取り組まれている「高校魅力化プロジェクト」は、この海士町にある隠岐島前高校から始まり、2008年ごろから本格化し、教育分野(県教育委員会)外のアウトサイダーが交わっていることが特徴のひとつでもあります。地域をテーマとしたプロジェクトベースドラーニングや I ターン誘致などが組み合わさり、現在では人口衰退の予測値を覆すほどに人口獲得ができつつあります。
島の人と外部からのエンジニアが混ざって考える
今回の参加者34名のうち、22名は島外からの参加だったこともあり、前日(22日)の夕方、港に到着した参加者は港の脇にある船渡来流亭で迎えられました。海士町の名物「サザエカレー」や「アジフライ」などのケータリングが提供される中、アイスブレイク、課題提供者からのピッチ、チームビルディング、アイディアピクニックのワークショップが始まりました。
6人の課題提供者から話を聞く
課題提供は漁業・農業・観光・不動産・教育・医療福祉の6種類あり、それぞれが役場職員やプレーヤーからの現状共有・課題点・悩みなどを話してもらいました。
- 漁業:漁獲量は多いが、加工工場がないため廃棄が発生してしまっている
- 農業:豊富な湧水とカルデラの溶岩によって生まれた平地で稲作ができるが、ブランド米のマーケティングに困っている
- 不動産:移住者誘致がある一方で住宅の空き物件が少なく管理も難しい
- 医療福祉:診療所が1つしかなく周産期や終末医療が受け入れられない
- 教育:高校で地域課題に取り組むプロジェクトが盛んに行われているが外部メンターが不足している
- 観光:観光客の宿泊日数や消費額が少なく、島を十分に楽しんでもらうことができていない
これらを受け、参加者が興味を持ったテーマのテーブルに移り、課題提供者と参加者で意見交換やアイデア出しを進めていきました。課題自体を言い換えたり、課題として捉えていない表現に言い換えたりと、ネガティブをポジティブに変換するワークなどが組み込まれていたこともあり、各テーブルで前向きな提案やポジティブな言葉が飛び交いました。
アイディアピクニック
それぞれの話題提供者がテーブルにつき、そのテーマに関心がある参加者が集まって、
- 現状抱えている課題のネガティブな要素を洗い出し
- ネガティブな要素をポジティブに言い換える「ネガポジ変換」
- 問いを立てながら再定義
- どうすれば実現できるのかを検討
という形でワークショップが進みました。ワーク終了後は近くの宿泊施設に移動し、焚き火を囲んでテーマや海士町の島の暮らしについて話したり、温泉に入ってリフレッシュしたりと隠岐ジオパークの一部でもある海士町の景色や自然を楽しみました。
フィールドワークとハッカソン
一夜明け、それぞれのテーマに添った場所や人を尋ねるために各チームでわかれてフィールドワークに向かいました。漁港や田んぼ、移民者向けの住居群、福祉施設などそれぞれの場所でヒアリングや見学を行い、会場に戻ったチームからそれぞれの提案したい企画のプロトタイピングを開始し、夕方の発表までに完成させて発表することができました。
- 漁業:廃棄されたお魚を島内で売り歩く「AMAer fish(あーまーふぃっしゅ)」
- 農業:海士町のブランド米「本氣米」の後継者問題と新規顧客獲得の提案
- 不動産:潜在的な貸したい需要を可視化しマッチングするプラットフォーム
- 医療福祉:既存のウェブサイトに高齢者の「食べたい」「行きたい」「会いたい」「やりたい」を応援する機能の追加を提言
- 教育:まちのチャレンジを可視化するサービス「まちチャレ」
- 観光:スポットに近づくとクエスト(ゲームのミッション)が出現し、観光客と町民をゲームでつなげる「あまクエスト」
表彰式では吉元操副町長(現海士町役場魅力化対策顧問)から観光のチームに海士町賞が授与され、アフターパーティーでは海士町の牡蠣「春香」や隠岐牛などに舌鼓を打ち、全員で輪になって「ふるさと」を合唱する海士町スタイルの締めに参加させていただきました
▷海士町公式note
▷シビックテックプロジェクト・ソーシャルハックデー
今回、プログラム企画運営を担当しました野田です。
海士町の皆さまの「ふるさとをどうにか守り発展させたい!」という熱い想いと、実際の土地を巡るフィールドワークと、島内島外参加者によるアイデアが絶妙に絡み合い、会場一体となったハッカソンだったなと感慨深い思いです。
海士町キャッチコピーの「ないものはない!」を何かしら体現できた3日間だったかもしれません。
今後も海士町では、エンジニア関係人口を広げていく試みを推進されるとのことなので、是非ご注目ください!