Code for Japan Summit 2023を開催しました

2023.12.22 | 活動レポート

Code for Japan Summit 2023

Code for Japan(CfJ)では、毎年秋ごろにシビックテックのカンファレンス「Code for Japan Summit」を開催しています。このイベントは、コミュニティの有志の皆さんとCfJのスタッフが運営委員となり準備をすすめてきました。当日は、司会、広報、統括の他、サミットではお馴染みとなったグラフィックレコーディングやUDトーク、セッションサポート、配信、受付会場案内など、当日スタッフのボランティアの皆さんも含めて、みんなでサミットをつくりあげました。
2023年はCfJ設立10周年であり、サミットの開催も10回目となる節目の年だったため「これまでの10年、これからの10年」をテーマに掲げ、11月23日に開催しました。このイベントレポートでは、これからの未来について参加者と登壇者で考えながら対話したイベントを一部ご紹介します。
活動紹介ページ(サミット):https://www.code4japan.org/activity/summit
2023年度のサミットページ:https://summit2023.code4japan.org/
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基調講演(A-1):「社会をハックする」

前半は「特務機関NERV防災」アプリを開発しているゲヒルン株式会社の代表取締役である石森大貴さんによるプレゼンテーション、後半はCfJファウンダー・代表理事の関治之(Hal)さんとのクロスパネルトークでした。
石森さんからのプレゼンテーションでは、「世の中には問題を抱えたシステムが星の数ほどあります」という投げかけから始まり、オープンデータと機械解読性について事例に取り上げながら紹介いただきました。
オープンデータの中には人が読むことしか想定されていないために正規化されていないものが多く、同じスキーマで読めるように変換して統一フォーマット化する作業や、コードが統一されていない情報を集約してマッピングしなおす作業が必要になるそうです。機械可読性の観点では、「スキーマに制約があって」「広く普及していて」「ライブラリが沢山あって」「クエリを簡単に組み立てられる」データベースファイルが理想的だという提案には、満席の会場から沢山の共感と賛同の頷きがありました。
また、フリーテキスト入力されたものは機械可読性がないため機械で判別できず、通知すべき防災情報かどうか確認が必要になっていたり、発生から情報入力までに時間がかかっていて通知が防災情報として間に合わなかったこともあるそうです。
石森さんから以下のようなデータ活用における課題点について投げかけがありました。
  • データだけがあってもすぐに役立つわけではない
  • データの入力コストが高く、民間で活用するには高いハードルがある
  • 情報の上流側が整ったメタデータの必要性を認識していない
防災アプリ「特務機関NERV防災」では、上記のような国や自治体で仕様が統一されていない、バラバラに発表される細分化された災害情報が出てくるデータをきれいに統合して提供しているとのことでした。
続いて、石森さんがアプリの設計やデザインで考慮されている点についても2つご紹介いただきました。
 

「情報がユーザーの判断を誤らせる可能性、ユーザーの選択肢を奪う可能性を常に考慮する」

これは予報や観測には技術的な限界があり、システムは設計された特定条件下でのみ正しく作動するということを前提にしています。例えば、避難情報を通知する際に、特務機関NERV防災では避難所までのルート案内はしていません。というのも、避難ルートに何が起きているかわからないのに無責任にアプリが避難先を案内することもできないし、防災アプリがルート案内をしてしまうと本来は他の避難のやり方があったかもしれず、結果的にそれはユーザーの選択肢を奪っている恐れがあるからです。
 

「アクセシビリティ向上のためにアプリを直し続ける」

石森さんは防災情報を発信する立場として、緑と赤の見分けが難しいご自身の色覚特性を例に挙げながら、色覚特性によっては何分も考えさせられる情報の出し方は良いとは言えないと述べたうえで、情報を伝えるツールの開発で心がけていることを教えてくれました。色覚やその他の障害を持った方が使える防災アプリにしていくには、「個人モデル」と「社会モデル」という2つのアプローチがあるとしています。特務機関NERV防災ではアクセシビリティについて「誰もが自分に合った手段や形式で情報にアクセスできること」と定義し、ユーザーが文字サイズや太さ、アイコン、スクリーンレーダーレイアウトなども個人で設定可能にしているようです。本人の特性ではなく問題はそのインターフェースとの障壁にあるとし、アプリを改善し続けています。
後半の石森さんと関さんのクロストークでは、技術自体よりも関係者との合意形成のほうが難易度が高いとのお話がありました。また、相違点としては「ともに考え、ともにつくる」とCfJが掲げている「共創」のシビックテックに対して、企業では創業者や経営者がビジョンや事業戦略の意思決定を行うことが挙げられました。
石森さんから、今後社会課題にチャレンジしたい人に向けては「起業はお勧めしません。法律的根拠のあるところに入って業界のことを知ってから、シビックテックに参加したり起業したりなどの次のステップに移ることをお勧めします。」とのアドバイスもありました。関さんからも「解決したい課題の領域での現場経験や知識をもとに、あとからテクノロジーの要素や自分のオリジナリティを追加する方が結果的には早い」としたうえで、これからシビックテックを始めたい人たちに対しても、技術はあとから学べることと課題にしっかり焦点をあてることが良いプロダクト開発につながるというアドバイスも、お二人からいただきました。
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ゲスト講演(A-2):「シチズン・インクルージョン」

このセクションでは、分野横断的なデザイン、プロダクトマネジメントの経験があり、起業家として2つのスタートアップの創設者でIDEO Tokyo エグゼクティブ・ディレクターのアリオーラ金田 アンナさんから、今後の社会に大きなインパクトを与える可能性が高いAI/ML(人工知能と機械学習)について、またこれらと共存していく私たちの社会におけるデザインの必要性について紹介がありました。
これまでAGI(汎用人工知能)は「鉄腕アトム」や『DUNE/デューン 砂の惑星』などといったSFの世界だと思われていたものが、今は急速に私たちの現実に向かってきています。多様な場面で広がっているAGIには、著作権侵害・セキュリティ侵害・社会的信頼を損なうディープフェイクなどの状況が出現しています。アンナさんはこういった被害があることも踏まえて「AIに恐れを覚えるのか、それともワクワクするのか?」という問いを私たちに投げかけました。これらを正しく理解し活用できる社会を実現するために必要な視点として3つのキーワードが挙げられました。
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Black box society(s)

ハイテクプラットフォームが人々の生活の支配力を強めるにつれ、ますます不透明になっていく様をBlack box societyと表します。社会の仕組みを作る側(プラットフォーマー側)がつくったもののアルゴリズム・仕組み・課題点などを市民側が理解しない・理解できないというブラックボックス化した社会に警鐘が鳴らされています。このような重大事項の決定プロセスが闇に葬られていく現状に対して、これまで沈黙を守ってきたテクノロジーの社会実装に関わる私たちが、政府や企業にどんどん声をあげていくことで社会の変容を促すことが求められるとアンナさんから提起がありました。

T-shaped person

このセッションにおいては、T型とは縦の深さが専門性、横への広がりが他領域への接続性を指します。AGIと共存していく社会の実現に向けて、エンジニアやデザイナー、研究者など其々の専門領域で活躍する人たちが、ジャズバンドのアンサンブルのように連帯して共創していくことが求められていきます。これは失敗やリスクへの対峙などを含め感情的にも知的にも難易度の高いことであると同時に、市民としての意思、人間や社会について考える意欲を持ち続けることが不可欠になります。

Intersectionality design

世界には人種、年齢、性的指向、性自認、身体的認知的能力、など複数のアイデンティティが交差し二重、三重の差別や抑圧を体験している人たちが存在します。マイノリティの中でも特に社会からの注目が集まりづらい状況にある当事者を可視化し、データに反映し、障壁になりうるものを多面的に考慮しながら、疎外されがちな僅かな人たちを融合していくデザインがIntersectionality designという考えです。アンナさんは、このように彼らのために意図的にデザインしていくことは、結果的に彼らのみならず市民全体のニーズへの対応を可能にしていくと述べます。また、新入社員や今後社会人になっていくZ世代、さらに若いアルファ世代、そしてその先の未来を生きる人たちのためにもなるとしています。
 
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勝手表彰@懇親会

サミット終了後に行われた懇親会では勝手表彰が行われ、様々なデータをわかりやすく可視化したり、防災/住まいの情報をつぶやいたりなどX(Twitter)での一連の取り組みでオープンデータやデータ利活用を実践的に盛り上げてくださっている、にゃんこそばさん(https://twitter.com/ShinagawaJP)が受賞式に登壇くださいました。同賞の受賞理由としては、「オープンデータxビジュアライズで新たなオープンデータ活用を切り拓いたのが、勝手表彰に相応しい」という点が挙げられていました。また、代表の関と一緒に10周年のお祝いのケーキ入刀もしていただき会場も盛り上がりましたっていました。
 
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編集後記

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私が就活をしていた2023年は生成AIを就職活動で使うことの是非が話題になるなど、AIが世間に受け入れられつつも反動もあった1年だったのではないでしょうか。AIによって私たち人間の仕事が縮小・消滅すると言われますが、そのような未来に悲観的になるのではなく、アンナさんも述べられていたようにAIと人間との共存や棲み分けが可能な未来を予測して行動することが大事だと感じます。また、私たちZ世代はインターネットやSNSを常用するデジタルネイティブな世代であるからこそ、AIと共存していくことになるであろうこれからの10年がどのような方向に進むのか常にアンテナを張っていきたいです。

ともに考え、

ともにつくる。

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